ぶちおの本棚

『廃用身』介護現場を見て生まれた、究極のケアなのかもしれない。見え方が何度も変わります。

2022年10月26日

ぶちおです。
おすすめ小説のご紹介です!

今回は『廃用身』
『廃用身』とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足のことを言うそうです。
リハビリをしても回復の見込みがない、加えて日常生活には悪影響を及ぼしてしまうような四肢…
ある医師が発見したケア方法、それは『廃用身』を取り除いてしまうというもので…

廃用身

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こんな人にオススメ

☆ショッキングな内容も大丈夫
☆介護、医療の暗い部分も知りたい
☆小説だ、ときちんと認識できる
☆あらゆる見方で『廃用身』を掘り下げたい

書籍概要

◆作品名  廃用身
◆著者   久坂部羊
◆出版社  幻冬舎

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく――。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない 衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。

Amazon『廃用身』作品内容より

ぶちおの読書感想文

『廃用身』
読むまでは、その単語の存在も、意味も知りませんでした。
そして、知ってからも衝撃!
>廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。

作品は前半で、漆原医師が提唱した【Aケア】についての記述がまとめられています。
【Aケア】はどうしてうまれたのか、どんな人に適用されていったのか。
後半は漆原医師の本を出版しようとしていた編集者による、一連の報道についてや取材内容が書かれています。

ページを開いてすぐに、現実と小説の境目が曖昧になります。
読めば読むほど、小説だよね?と確認したくなりました。
その仕掛けはあとがきまで施されいます。

漆原医師は、デイケアの現場で老人たちの日常的な嘆き、介護スタッフや家族たちの疲労に直面します。
中でも、病気等によって麻痺してしまった四肢に対して複雑な気持ちをもっています。
感覚もなく、リハビリをしても効果はなく、画期的な治療法もない。
動かないまま胴体にくっついて、どちらかというと介護の妨げになっているのではないか。

体重が90キロを越えている男性は、動かない両足の重みでひどい床ずれが出来てしまっている。
右腕が麻痺して曲がっている女性は、着替えの度に動かない腕が邪魔している。
冷たい、痛い、言うことをきかない自分の体…

漆原医師は、そんな『廃用身』の切断が治療になるのではないかと思い始めます。
切断することで、残されている体の部位に意識が向いていくのではないか。
介護をするスタッフも、『廃用身』の切除によって介護自体の負担が減るのではないか。

動かないから切断、というのはあまりに乱暴な理論だし、到底受け入れられるものではありません。
そして保険適用もされない医療ですし、そんな手術を受け入れてくれる病院はありません。
しかし、漆原医師は幸運にもこの問題をクリアしていき、どんどん『廃用身』切断手術を実行していきます。
手術は【Aケア】と名付けられ、漆原医師のデイケアに浸透していくことになります。

トンデモ理論の【Aケア】ですが、漆原医師の手記では術後も良好で、前向きに受け入れられていく様子があります。
【Aケア】したことで、老人達もスタッフも家族も笑顔!

イカれているだろうと思って読んでいましたが、なんだか、、、
介護現場に光をもたらしてくれるのか?と思ってしまうのがこわいところです。
慎重に説明をして、本人の希望がなければ絶対に【Aケア】はしない。
前例がないことだからこそ、反発はあるけどそんな意見もしっかり聞き入れていく漆原医師の姿勢。

自分なりの努力を続けていた漆原医師ですが、認可されていない四肢切断手術をしていることが世間にバレます。
ある老人ホームには、四肢を欠損した人が多くいる。
スタッフも含めて、ハイ状態で異様な光景が繰り広げられている。と。

漆原医師は、マスコミの餌食になります。
漆原医師の活動を書籍化しようとしていた編集者の視点にかわり、物語は進みます。

マスコミの苛烈な報道で姿を消す漆原医師、
漆原医師をたたく報道を再調査をする編集者、
前半で読んだ漆原医師の記録が、ひっくりかえります。
そして編集者の再調査を追っていくと、また違った見方になります。

動かない四肢を切断したことで、心身ともに回復した人がいる。
手足への血流をなくしたことで、脳に多くの血流が回り、脳機能が向上した人がいる。
漆原医師の【Aケア】は着実に結果を出しているように見えますが…

小説の中のことと思いつつ、高齢社会や介護現場の逼迫は現実そのものの課題です。
だからこそ、漆原医師の提言を無下にすることも何か違うように感じてしまいました。

四肢がなくても快活に楽しんでいる人もいます。
過去にも根拠のない医療行為はたくさんありました。時代が流れていけば倫理観もかわっていきます。

ラストに漆原医師とその家族を襲う悲劇。
その結末は、何とも言いがたい皮肉を感じました。

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『廃用身』の作者、久坂部羊先生の作品をご紹介します。

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その日に備えて、読んでおきたい「死の教科書」。
死ぬ時はどうなのか、なんて生きているうちにはそうそう考えません。

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「患者ファースト」のMR vs. 儲けしか頭にないMR
しっかりと見定めないと、足をすくわれてしまうかもしれません。

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『介護士K』
介護現場の実態を通じて人の極限の倫理に迫る問題作。
架空の話と思って通り過ぎることはできません。

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『無痛』
あの事件の犯人は自分だと告白した、が……。
あらすじだけで気になること間違いなしです。

まとめ

『廃用身』
老いから逃げることはできません。
段々と融通がきかなくなっていく体に、苛立つメンタル。
迷惑をかけて生きるくらいなら、早く死にたい。
もう復活することのない四肢と引き換えに、新しい生活があるのかもしれないと思ったら…
どうするでしょうか。

限りある時間、介護をしてくれるスタッフや医療関係も有限です。
自分のことは自分でやりたい!
漆原医師が提案する【Aケア】はそんな気持ちに寄り添う、医療行為だったのかどうか…

是非、本書でお確かめくださいませ。

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