『その可能性はすでに考えた』たった一人の生存者は、彼を殺めたのか。辿れ、たった一つの可能性を。

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ぶちおです。

今回は『その可能性はすでに考えた』をご紹介しようと思います。
探偵に次々挑んでくる刺客！誰が送り込んできているのか。
そして、刺客達が提示してくる可能性をぶった斬っていく探偵。

最後に残された可能性に、じんわりしました。

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

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こんな人にオススメ

☆人としてはダメ要素多めの探偵が好き
☆風変わりな推理合戦を見たい
☆裏社会が気になる
☆凄惨な事件に残る謎が好物

書籍概要

◆作品名　その可能性はすでに考えた
◆著者　　井上真偽
◆出版社　講談社

山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶ不可解な記憶があった。首無し聖人伝説の如き事件の真相とは？　探偵・上苙丞(うえおろじょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとする。論理(ロジック)の面白さと奇蹟の存在を信じる斬新な探偵にミステリ界激賞の話題作。
Amazon『その可能性はすでに考えた』作品内容より

ぶちおの読書感想文

『その可能性はすでに考えた』
流れの雰囲気が『探偵が早すぎる』のようでした。
『探偵が早すぎる』は事件が起きる前に探偵がトリックを犯人に返しちゃうんですよ。
事件起きてないけど解決しちゃった！と驚いた作品です。
犯人側も先鋒がやられたら次鋒、次鋒がやられたら中堅と、どんどん挑んでくるという斬新な構図。

本作も探偵が推理するかと思ったら、刺客が推理を披露。
刺客の推理に納得できるか、と思っていたら探偵が論破していくという。
次から次に刺客が来ては、推理を朗々と披露します。
探偵の見せ場が根こそぎ奪われているのでは？！と思っていましたが、心配ご無用。
タイトルの通り、『その可能性はすでに考えた』というキメ台詞で、探偵による刺客の推理論破が始まります。

探偵は上苙丞(うえおろじょう)。
見たことも読んだこともない名前でした！うえおろ、慣れないと舌がもつれそう。
上苙は頭脳明晰だけど、普通の暮らしが出来ない系の探偵です。お金にだらしないというか。
ヤバイ系金融を扱うフーリンから借金しまくっています。
借金しまくっているのに、事務所にバイトを雇おうとするのが上苙！

いよいよ返済やばいぞ！という時に依頼人・リゼがやってきます。
リゼの依頼内容は、自分は人を殺してしまったかもしれない。当時の記憶は曖昧だけど、覚えていることもある。
その断片を繋げて、実際に起こったことを教えて欲しいというものです。

リゼが小学生の時に巻き込まれたカルト宗教団体の斬首集団自殺。
ほぼ自然の密室と言える村の中で、唯一の生存者がリゼでした。
教祖、信者を含め30人以上の死体が見つかった。
リゼが好きだった少年も、首を斬られた状態で発見されている。
しかし、現場の状況から誰が少年を殺したのか。どうやって首を斬ったのかは不明のまま。
もしかしたら、この少年を手にかけたのは…

リゼの記憶を繫ぎ、当時の事件記録と照らし合わせ、すべての可能性を検討する上苙探偵！
とんでもない量の報告書にまとめて、いざリゼに真相を話そうとしたところで刺客達との推理合戦にもつれこみます。

上苙探偵は、その可能性はすでに考えた。こういう理由でその推理は成り立たないと論破論破です。
じゃあ、どれが真相なんだよ！と気持ちがもきもきしてきたところで黒幕登場。
黒幕と探偵のバチバチ論戦の末、出された結末が…

この結末、ちょっとグッとくる系と言いますか。
異様な大量殺人だったし、カルト教団の掟とか胡散臭いし、リゼは純粋に巻き込まれただけだし、これが真相かぁ～としんみり。
動機が、何とも…でも、そうか、その方法しか残されていなかったか。

リゼの短い記憶の中に、答えは隠されています。
そして表紙にも推理に繋がるオブジェクトが描かれています。
もちろん最初に表紙を見ても？だらけですが、読了後に見つめると味わい深いものがあります。

刺客の推理に惑わされず、真相を見抜ければ間違いなく名探偵！