『adabana 徒花』自首した少女。減刑も求めず、少女が法廷に仕掛けた罠とは。

ぶちおです。

今回は『adabana 徒花』をご紹介しようと思います。
作者は『ハレ婚。』『デリバリーシンデレラ』のNON先生です。
可愛い女の子の生き方や葛藤の描写にグッとくる作品が多いです。

本作は親友を殺害したという女子高生と、殺害された女子高生の物語です。

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こんな人にオススメ

☆ヒューマンドラマが好き
☆読み手に与えられる余白が好き
☆じっくり考えたい
☆NON先生ファン

書籍概要

◆作品名　adabana 徒花
◆著者　　NON
◆出版社　集英社

雪積もる小さな町で、猟奇的な殺人事件が起こる――。身体を切断された被害者は女子高生・五十嵐真子。そして、犯人として警察に自首して来たのは、同級生の藍川美月。犯行を供述する美月だが、そこにはある違和感が…!?　闇に抗う2人の少女の“秘密”をめぐる、リアル・サスペンス!!
Amazon『adabana 徒花（上）』作品内容より

ぶちおの読書感想文

『adabana 徒花』
NON先生の作品は、明るい美少女が元気に人生生き抜いてるぞ！的な印象が強いです。
一夫多妻制に振り回されながら、他の妻に負けないめげない『ハレ婚。』とか、
夜になったら蝶になり、デリヘル嬢として輝く『デリバリーシンデレラ』とか、
びっくり設定でも、キャラクター達がとかく明るいです。

本作は、どこにでもいそうな物静かな女子高生・美月と、美月とは対照的に明るい友人の真子がヒロインです。
作中ではミヅキ、マコと表記されています。
そのあたりが、高校生のくだけた感じがよく分かります。

ミヅキは口うるさい母親に朝から受験のことでガミガミ言われます。
顔筋を一切動かさないまま、母親の小言をスルーして、学校に…
行かずに警察に出頭します。
凶器の包丁を出して、｢マコを殺したのは自分です｣と告げて、そのまま勾留されます。

どうして唯一の親友、マコを殺害したのか。
その動機がもっとも気になります。

ミヅキの家庭は、母親は毒親風味、父親は無関心となかなかの不和っぷりです。
マコは母親を亡くし、父親は仕事に就くことが出来ず、叔父のラーメン屋でバイトをしてなんとか生計をたてています。
家に居づらい2人は学校や放課後を、よく一緒に過ごしています。
〝春休みになったら、夢の国に遊びに行こう〟
そんな普通の話をして笑い合う日常でした。

それなのに、ミヅキはマコの死体の前に立っています。

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夜、ミヅキがマコの働くラーメン屋に向かうとマコは出前で不在でした。
マコの叔父さんから気持ち悪い提案を受け、ミヅキは襲われます。

抵抗の果てに、包丁で叔父さんの首を切って殺害した。
その時、マコが出前から帰ってきて、2人で協力して死体を始末した。

でもマコにはストーカー化した元カレがいて、秘密を知られたかもしれない。
元カレはミヅキに接触してきて、マコは段々不安定な状態になっていった。

口論しているうちに、マコを殺していた。
死体を解体しようとしたけど、思ったより大変で断念した。
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ミヅキの供述はざっくりとこんな内容です。
接見した弁護士は違和感を覚えます。
マコの叔父を殺害した経緯に比べて、マコの殺害の状況はやけに抽象的…
弁護士、真相を調べます！
ミヅキが語っていないことが必ずあるはずと、弁護士ネットワークを駆使して調査を進めます。
が、そこは一筋縄ではいきません。

ミヅキは淡々と事実を語っていて、反論もしない。
正直、何が目的なのかわからない。
淡々とマコの叔父さんを殺害したと話す時も、顔筋を崩さずしれっと答えます。

真相はミヅキにしか分かりません。
マコ自身、マコの叔父、父親、元カレと、人間関係が見えてくるのですが
大人はクズしかいないんか！！！と叫びたくなるくらい、マコが可哀想になります。

気付くと抜けられないところにいて、どんどん自分が堕ちていく。
親友としてマコは何をしたのか、
ミヅキは何をしてあげたのか。

最後に見た景色に、グッときました。