ぶちおです。
今回は『インク色の欲を吐く』をご紹介しようと思います。
オスカー・ワイルドの『サロメ』の挿絵で有名なオーブリー・ビアズリーの生涯が描かれています。
どんなだっけかと検索して、その画を見ればすぐにあの人か!とピンときました。
毒々しさもあるけど、一度見たら忘れられないタッチ。
《露悪的だ》《やりすぎている》と批判を受けても、追求する芸術の道を変えずに筆を持ち続けた異端の画家。
何に取り憑かれていたのか。
オーブリーとは、どういう人物だったのでしょう。
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こんな人にオススメ
☆芸術家の大変さをちょこっと知りたい
☆姉と弟の絆の強さを見たい
☆天才の苦悩や葛藤が気になる
☆命を削る意味を見てみたい
書籍概要
◆作品名 インク色の欲を吐く
◆著者 梅ノ木 びの
◆出版社 KADOKAWA
生誕150周年。25歳の若さで亡くなった異端の画家オーブリー・ビアズリー、その栄光と破滅の生涯を描く。
19世紀末のイギリス。21歳の青年ビアズリーは小説家オスカー・ワイルドのもとを訪ねてこう言った。
「是非ボクの絵を『サロメ』に使って欲しいのです」
ワイルドは突然の申し出に驚いたが、
彼の大胆不敵な態度、妖しい魅力、そしてたぐいまれなる才能に溺れていく。
同性愛疑惑、実姉との近親相姦などスキャンダラスな噂が飛び交う一方で、
肺病に苦しみながらも、ただひたすらに作品を描き、芸術にすべてを捧げた。
地位も名誉も手に入れたビアズリーが、死の直前に求めたものとは――。
ぶちおの読書感想文
『インク色の欲を吐く』
今も昔も、芸術で食べていくのは苦労しかない気がする!
亡くなってから作品が評価されることも多いし、生きている間も芸術の闇に取り込まれて不健康になってしまう人も多いイメージです。
芸術は明確な答えもないし、上手=素晴らしいでもない。
見る人や、見ている時代によっては真逆の評価がつくこともざらです。
ぶちおは『怖い絵』シリーズも好きなので、絵画にまつわる謎も好物。
こっそり画家が作品に残した秘密。
描いていた時の画家の不穏な精神状況。
作品を残した画家本人の数奇な人生。
ぶちおには絵画のなんたるかが何もない状態なので、想像が難しい画家の世界。
だからこそ『インク色の欲を吐く』のように漫画で教えてくれる作品がありがたし!
作品全体から匂いたつようやで。
ぶちおの絵画の思い出あったかな。
学生時代に描かされた絵だって真剣に取り組まなかったもの。
見たままを描くが出来なかったし、絵の具の片付けが面倒だから絵の具をなるだけ使わないということに意識集中していました。
友人にめちゃくちゃ絵が上手い子がいましたが、その子は隙あらば絵を描きまくっていました。
何度も同じテーマを模写したり、鉛筆を何度も削って満足のいく線だけを残したり。
描かないと衰える、描くほどに上手くなる、というのを目の当たりにしました。
その子が絵を描いている時は、誰も声をかえられない。
集中力もえぐかったし、継続する力も凄かった。
「え、こんなに上手かったら漫画家になれるんじゃない」と無邪気に褒めると、
「これはただのトレースだから。私のものじゃないから」と真顔で返されました。
よくわからんが、その子にしかない真理があるのだなぁと。
凡人のぶちおはクールに去ることしか出来ないぜと。
本作の話題に戻ります!
芸術家は危うい生き方の人が多いイメージがあります。
本作の主人公、オーブリー・ビアズリーも危険人物といえるでしょう。
《注目されて生きる意味が生まれる》
破滅主義?快楽主義?
そんなことを続けてはよくないと言われても聞かない。
破滅しかないとわかったとしても立ち止まることができない。
危うさしかないぜ。
自分の作品を残したい、たくさんの人に認知してもらいたい、有名な画家に褒められたい。
オーブリーの承認欲求が凄いな!と。
人気の無い作家の描く絵に払われる金額は安い。
有名になれば仕事も増えるし、認知度もあがる。
才能があるだけでは意味がない、たくさんの人の目にとまらなければ!
貪欲さがなかったら数々の作品は埋もれていたかもしれません。
ぐわーーーっという尋常ではない熱意があったから、今にも残っているんだと納得です。
自分を売り込むに、どうしたらいいかを考えたオーブリーは姉のメーブルとともに、オスカーに芝居を打ちます。
オスカーの『サロメ』の挿絵の担当になれれば、今後の画家人生に大きなプラスになる。
騙しとも言える手法ですが、そうでもしなければ無名の画家の作品を誰も見ようともしない。
人は権威に弱いものだもの。
『サロメ』の有名なワンシーン。
皿に載せられたヨカナーンの首を見つめるサロメという題材は、たくさんの画家が描いています。
どういう構図にするか。
サロメとヨカナーンの表情をどう描くか。
何を一番伝えたいか。
すべて画家の裁量に委ねられています。
サロメがヨカナーンの首を求めたはずなのに、作品によってはヨカナーンの首から視線を逸らすサロメだったり。
首が乗った皿をもっても無表情なサロメだったり。
首からは目を逸らしつつも、ちょっと口元がほころんでいるサロメだったり。
複雑すぎるおとめ心のサロメを表現するのは、難しいで…
ただ好きな相手の首をもつ若い女性というテーマは衝撃すぎて、人の関心を惹き寄せる作品。
そしてオーブリーのサロメは。
ヨカナーンの前髪をわしっと掴んで、自分の方に顔を向けさせているように見えます。
サロメの顔も笑っているような、蔑んでいるような。
是非、元の挿絵の数々を見ていただきたい。
『サロメ』の成功で、一躍有名になったオーブリー。
当時の美意識への挑戦とも言える作品の数々。
刺激が強いというか、悪意をちらつかせているというか。
それら含めて、インパクトのある画です。
エロいグロい、と批判する人がいるとしても、人間は綺麗な部分だけじゃない。
悪いところがあるのもひっくるめて人間、そのままを描きだしているんだといわんばかり。
なんとなく、癖強だったんだろうなぁ~オーブリー。
小さい頃から体が弱く、常に病魔に苛まれています。
25歳という若さで亡くなってしまいますが、自分に残されている時間が人よりも短いと分かっているからこそ苛烈に生きたのかな。
寝食を忘れて筆を走らせる。
見たものから得た感動を、衝動的に筆に乗せる。
死ぬまで描き続けるだろうという気迫。
オーブリーとともに生きてきた姉・メーブルの献身も大きいです。
姉の夢は女優になること。
器量も良かったけれど、なかなか舞台に立つことは出来ない。
オーディションの結果も散々、弟を支えるために家庭教師の仕事で生計を立てる日々。
体の弱い弟を支えながら、自分の夢も追い続けるメーブル。
当時の状況を考えれば、メーブルの生き方も褒められたものではなかったはず。
辛いことが多かったはずなのに腐らず、危うい弟の面倒を見るって相当やぞ!!
メーブルの存在がなければ、オーブリーも何も残さなかったかもしれない。
オーブリーは短命だったし、やりたい事もやりきれなかったでしょう。
もっともっと仕事をしたかっただろうと。
でもメーブルはじめ、なんだかんだ周囲にいてくれた人達には恵まれていた気がします。
裏切られたりもしたけど、オーブリーの為を思って動いてくれた人はたくさんいたと思います。
やっぱりいい出会いを引き寄せるのも才能じゃ。
波瀾万丈だったけど、オーブリーらしさしかない。
残された作品だけではわからない一面を見ることが出来ました。
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こんな漫画もおすすめ
『インク色の欲を吐く』を読んで、本作をより楽しめるやもしれない作品を選書してみました。
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『新訳 サロメ』
日本初演から110年。私達は「本当のサロメ」に初めて出会う。
――月夜の晩。エロド王に請(こ)われ、妖艶な踊りを披露したサロメ。王に求めた褒美は美しき預言者ヨカナーンの首だった。少女の激情を描き、男性同性愛の記号(モチーフ)を潜めることで、当時の西欧社会の抑圧を挑戦的に描いた本作は、実はワイルドの抵抗(レジスタンス)!? 仏語原文を忠実に読み解き、見過ごされてきた男達の意外な葛藤を示し、真のドラマ性を見事に新訳! ビアズリー画18点掲載。
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『オーブリー・ビアズリー』
世紀末のイギリスに現れ、大胆なデフォルメや奇想ともいえる圧倒的なデザイン力で「鬼才」と謳われながら、25歳の若さでこの世を去ったビアズリー。
日本でも、手塚治虫から資生堂デザインにまで影響を与えたカリスマの作品集、待望の刊行です。
まとめ
『インク色の欲を吐く』
病魔を押しのけて、描き続ける生涯。
ただ描けばいいわけではない。
描いた作品を世に知らしめなければ!
自分の作品を広めるために、何が出来るのか。
誰を利用すればいいのか。
すべての体験、感情を作品に宿す。
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