ぶちおの本棚

『許されようとは思いません』感情の底の底をのぞきみたいなら…想像よりも昏いかもしれない…

ぶちおです。

今回は『許されようとは思いません』をご紹介しようと思います。
ヒトコワ好きとして、やはり人間の化けの皮ははぎまくってなんぼだと思っています。

基本的にぶちおは面従腹背で生活しています。
というか、大多数の人はそうでしょう。
ありのまま、言いたい放題で生きるのは色々と問題あると思うので、大なり小なり偽っていることはあるでしょう。
その内側にこそ、本質があるんじゃなかろうか?!

誰にも見せられない内側から、外側に滲みでてしまう狂気…

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こんな人にオススメ

☆ぞわっとしたい
☆やっぱりヒトコワがたまらん
☆短編で楽しみたい
☆追い詰められた人間を見たい

書籍概要

◆作品名 許されようとは思いません
◆著者  芦沢央
◆出版社 新潮社

「これでおまえも一人前だな」
入社三年目の夏、常に最下位だった営業成績を大きく上げた修哉。
上司にも褒められ、誇らしい気持ちに。
だが売上伝票を見返して全身が強張る。
本来の注文の11倍もの誤受注をしていた――。
躍進中の子役とその祖母、凄惨な運命を作品に刻む画家、
姉の逮捕に混乱する主婦、祖母の納骨のため寒村を訪れた青年。
人の心に潜む闇を巧緻なミステリーに昇華させた5編。

ぶちおの読書感想文

『許されようとは思いません』
全部で5編収録されています。
最初から4つ目のお話は、人間の怖さを感じられる系。
ラスト5つ目のお話は、じんわりあったかみを感じられる系になっています。

・目撃者はいなかった
仕事でやらかしてしまった時、素直に謝れるか否か。
もちろん、何かミスをした時はさっさと白状するのがベストです。
結果的に些細なことだったとしても、Openにしていくのが良きこと。
逆に些細なことだからと隠してしまうと、後々大問題になったりします。

こちらの主人公も、最初は単なる発注ミス。
すぐ謝れば、関係各署に怒られたでしょう。でも逆に言うと怒られるだけで終わるくらいのミスです。
損害も出してしまったけれど数十万程度、リカバリーはいくらでも出来る金額感。

でも!やっと仕事を認められてきた矢先、ここで信頼を落とすことなんて出来ない。
ミスの内容も単純過ぎて、新入社員がやるようなレベル。
恥ずかしい、どうしよう、言えない、何とか帳尻を合わせよう、自分だけで何とか出来る。

こうして涙ぐましい隠蔽工作をするのですが、工作中に交通事故の目撃者になってしまって…

ぶちおも仕事のミスはな~些細な誤字だって落ち込みますw
見直してたはずなのに、目ン玉どこについてんだよ、と猛省。
ただ、隠蔽は疲れるのをしっているので、すぐに白状します。

どんだけミステリを読んでいると思ってるんだ!
ミスって色々と辻褄合わせようとするとコ○ンとか金○一にすぐ見抜かれるんだから!

・ありがとう、ばあば
孫を売れっ子子役にするために、ばあばが奮闘です。
自由主義な娘夫婦に任せていられない。
食事制限も、メディア対策も、敏腕マネージャーよろしくばあばが仕切ります。

でも、本当に孫はそんな生活を望んでいるのか?
大人のエゴではないのか?
人生経験が浅い孫のためにやっていることは、本当に孫の幸せのためなのか。

親よりも祖父母からの期待が大きいのは、また違うのでしょう。
ぶちおが子どもの頃は、厳しい大人が親族にはいなかったので未知の世界。
むしろ、人前でも厳しく子どもを叱っている親を見ると気まずい空気が流れていた気がします。

昔、ぶちおが田舎を散歩していた時の思い出なのですが、聞こえてきたバイオリンの音色。
どうやら近くの民家でバイオリンのレッスンをしているようでした。
曲の途中でバイオリンの音が止んで、次に聞こえてきたのは母親らしき女性の叱責。
道を歩いているだけで聞こえるもんで、相当な大声だったと思います。
期待しているがゆえなんだけど、子どもはどう思っていたのかなぁ。

期待してもらっているんだ!出来るようになってやる!と前向きだったら、まだいいのでしょうが…

・絵の中の男
地獄絵のような独特の世界観を描いた画家。
画家がモチーフにしているのは、身近な人の死。
感情を爆発させた絵には多くのファンがついている。
その画家の周囲には、あまりに凄惨な事件が起きている…

いわくつきの絵、というのはどうしたって気になります。
想像上の創作ではなく、実際にあったことを絵にしたとなるとなおさら。
こんなに恐ろしい絵をかけるなんて、何か隠されているに違いない。

その画家の世話をしていた女性の語り口調で終始進んでいきます。
彼女が知っている画家の過去を通じて、事件の真相を追っていきます。
ホラー味もあるので、ぞわぞわしました。

・姉のように
慕っていた姉が逮捕された。
メディアにも実名が乗っている。
親族にも知れ渡り、自分の周辺の人達にも姉のことがバレてしまう。

姉の逮捕をきっかけに、段々と崩れていく日常。
周囲の視線が気になる。
育児だって大変なのに、過剰なストレスでおかしくなりそう…
実母にさえ頼ることがためらわれる、旦那になんて言えるわけがない。
こんなことが起こった時、どうしたらいいのか誰も教えてくれない。

最後に、え?そうだったの?!とびっくりしました。
おはなしの最初のページに戻って、見返しましたもの。
ちょっと現代の闇っぽさも感じつつ。
孤立させたらダメとは言うけど、実際自分からこもっちゃう人もいますし。
コミュニティって難しいのう…

・許されようとは思いません
田舎の掟というか、因習というか。
昔ながらの価値観に縛られて生きていた祖母。
優しくて、辛いことがあっても耐えていたのに、どうしてあんな事件を起こしてしまったのか。
そんなことをしたら、村の中での扱いがさらに悪くなるのは分かっていたはずなのに…

このおはなしは、ほっこり味が潜んでいます。
ここまでの4つで、それなりに人間の闇部分を見てきたのでこのおはなしでちょっと救われました。
全部が全部、隠されている本音が悪意じゃないなと。

多様性番長が横行している昨今から見ると、古めかしい村の掟。
村の外から来た住民は、いつまで経ってもよそ者。
村内での暴力や暴言もまかり通る。

掟は必要だとは思いますが、不条理な部分もある。
いや、大体全てに道理が通る掟はないかもしれません。
大概、誰かに都合のいいように作られているもので…ごにょごにょ。

祖母が残した思いとは…

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まとめ

『許されようとは思いません』
あと少し、どうして待てなかった。
憎いなら、もっと苦しませることだってできた。

許してもらわないでくれていい。

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