『儚い羊たちの祝宴』彼女達が抱える秘密の目的。各話のラストで、すんっと背筋が冷えました。

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ぶちおです。

今回は『儚い羊たちの祝宴』をご紹介しようと思います。
米澤穂信先生が紡ぐ、5つの物語。
一見、普通なようでいてそうではない。
彼女達の秘密が暴かれる日は来るのでしょうか。

読者の想像力が刺激されます！

儚い羊たちの祝宴（新潮文庫）

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こんな人にオススメ

☆秘密を知りたい
☆読者に委ねられる想像の幅を楽しみたい
☆暗喩大好き
☆米澤穂信先生ファンだ

書籍概要

◆作品名　儚い羊たちの祝宴
◆著者　　米澤穂信
◆出版社　新潮社

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。
Amazon『儚い羊たちの祝宴』作品内容より

ぶちおの読書感想文

『儚い羊たちの祝宴』
物語の内容は、読む人に結構委ねられています。
くっきりはっきり書かれていない部分もあるので、隠されている部分を読者がのぞきにいくスタイルだと感じました。

人によってはハッキリしない、結局どうなったの？とモヤモヤするかもですが、
明確に書かれていないからこそ怖さが増すのです。
余白部分を想像して楽しむ、勝手に脳内で補完して怖がるという読書体験ができました。

作品には5つの物語があり、各話で主人公が変わります。
すべてに共通して出てくるのは｢バベルの会｣と呼ばれる読書サークルです。
名家の令嬢たちが集って、読書に耽る。
年に一度、蓼沼で合宿も行われる。
この会に関わった人達の末路はなかなか暗いと言えます。

ハッキリとした時代は書かれていなかったかと思うのですが、ちょっと昔の日本。
主従関係とか家長制度が健在だった頃です。
女は勉強するな、男児を産め、家長が言うことは全員服従、現在だと色々コンプラOUT案件！
相続問題で人死にが出るのも普通のことだし、身分の差はどうやっても埋められない。
そんな時代の女性達がメインに書かれているからこそ、どこか応援しちゃう。

・身内に不幸がありまして
お嬢様は、自分の好きな本すら読めません。まさに篭の中の鳥。
しかし、隠れて秘密を共有出来る人が１人だけいます。お付きの少女との時間が何よりも楽しいと感じられる。
毎年、同じ時期になると家の誰かが亡くなってしまうのは、もちろん呪いなどではなくしっかりした理由があるのですが。

・北の館の罪人
私生児として生まれた少女は、母を亡くし、父を頼って館に赴きます。
そこで言いつけられたのは、いわくのある離れで腹違いの兄の世話をすること。
少し変わり者な兄から頼まれるのは、不思議な買い物。

・山荘秘聞
何でもこなせるスーパーメイドが登場です。
冬は雪に閉ざされてしまう、人里から離れた山荘をたった1人で回します。
メイドの本懐にふれることが出来ることでしょう…

・玉野五十鈴の誉れ
跡取りとしていた彼女に、弟が出来た。
その意味が何をもたらすかはすぐに分かります。
食事もわずか、離れで幽閉状態、今まで仲良くしていた人にもそっぽを向かれる。
途端に幽閉生活が終わった理由が。
この話が一番怖かったｗ

・儚い羊たちの晩餐
今までの4つの物語を読み終えて、遂に最後の物語です。
暗喩も炸裂しています。
手記を残した彼女は、家の応接間に飾るに相応しい絵画を聞かれた時に｢メデューズ号の筏｣と答えて発注します。
少し美術を知っている人であれば、ん？となるかと。
やはり彼女も何かよからぬものを腹に持っているのではなかろうか。
宴会用の絶品料理だけと作る厨娘が作る料理にも、もちろん何かがありそう。

｢羊たち｣と聞くと、ピンとくる人はもうラストを予期出来てしまうのではないでしょうか。
ただ、残された手記を読んだ彼女もまた、あるアイデアが閃いたようで…

ゾクゾクを堪能しましょう。