ぶちおの本棚

『僕が死んだあの森』あの森で死んでしまったのは、誰なのか。どうしよう、主人公の行動が読めない!

2024年10月1日

ぶちおです。

今回は『僕が死んだあの森』をご紹介します。
『その女アレックス』でその年のミステリ賞をぐわぐわ獲得した著者、ピエール・ルメートルの作品です。

小さな村の暗い森の中で人を殺した少年は、この先、何に囚われることになるのか。
村の人達、家族、恋人、誰にも知られてはいけない事実を隠しきれるのか。

読了後は、くらぁ~く、じと~っとした気持ちになります。

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こんな人にオススメ

☆イヤミス系小説が読みたい
☆田舎の閉鎖的な空気がいい
☆主人公の葛藤を見守りたい
☆結局人生はプラマイゼロになると思う

書籍概要

◆作品名  僕が死んだあの森
◆著者   ピエール・ルメートル
◆出版社  文藝春秋

『その女アレックス』の鬼才ルメートルが描く、戦慄の犯罪文学

『その女アレックス』で世界中を驚愕させた鬼才ルメートルが放つ、極上の心理サスペンス。

 あの日、あの森で少年は死んだ。 ――僕が殺した。

 母とともに小さな村に暮らす十二歳の少年アントワーヌは、隣家の六歳の男の子を殺した。森の中にアントワーヌが作ったツリーハウスの下で。殺すつもりなんてなかった。いつも一緒に遊んでいた犬が死んでしまったことと、心の中に積み重なってきた孤独と失望とが、一瞬の激情になっただけだった。でも幼い子供は死んでしまった。

 死体を隠して家に戻ったアントワーヌ。だが子供の失踪に村は揺れる。警察もメディアもやってくる。やがてあの森の捜索がはじまるだろう。そしてアントワーヌは気づいた。いつも身につけていた腕時計がなくなっていることに。もしあれが死体とともに見つかってしまったら……。

十二歳の利発な少年による完全犯罪は成るのか? 殺人の朝から、村に嵐がやってくるまでの三日間――その代償がアントワーヌの人生を狂わせる。

『その女アレックス』『監禁面接』などのミステリーで世界的人気を誇り、フランス最大の文学賞ゴンクール賞を受賞した鬼才が、罪と罰と恐怖で一人の少年を追いつめる。先読み不可能、鋭すぎる筆致で描く犯罪文学の傑作。

ぶちおの読書感想文

『僕が死んだあの森』
久しぶりにピエール・ルメートル作品を読みました。
そして、思い出す…何とも言えない、いやぁ~な後味が残る系だということをw

『その女、アレックス』のカミーユ警部シリーズの時も、『死のドレスを花婿に』の時も、そう、イヤミスだったと!!!
ちなみにイヤミスというのは読んだ後に【イヤな気分】になるミステリー小説の一種のことです。
本作はミステリというより犯人の少年の記録的な要素が多いですが、何とも言えない重たい気持ちになるというのが共通しています。

しかし!スッキリしない結末だとわかっているのに、読んでしまう!
ルメートル作品は、それらひっくるめて引き寄せられる魅力があるのです。

本作の主人公はアントワーヌという12歳の少年、フランスの小さな村で母親と2人暮らしをしています。
両親は離婚していて父親はドイツで生活中、
とくに父親への愛着は感じておらず母親を自分が支えてあげないとと思っているアントワーヌ。

アントワーヌの母親はルメートル作品に多い、エッジの効いた母親です。
近所付き合いはそつなくこなす、子育てにも独自のルールがしっかりある、テレビゲームは禁止、家事は手を抜かない、そんな母親です。
どちらかというと、子どもにとっては窮屈な母親。
ぶちおなら、発狂する教育方針w

でも子どものためを思っているのも理解しているので、アントワーヌは母親に従順です。
もっとこうして欲しいとか要望があったとしても、母親に楯突いたりはしない。
母親との関係も、この後のアントワーヌの人生に影響を及ぼしていきます…

学校での人間関係も微妙で、アントワーヌの癒しは隣家で買われている犬のオデュッセウス。
外出の時にも連れだって、ぼっちのアントワーヌの心の隙間をうめてくれるワンコの偉大さ…
しかし、オデュッセウスは事故に遭い瀕死の重傷を負ってしまいます。
オデュッセウスの飼い主である隣家の主人デスメット氏は銃でワンコを撃ち殺して、ゴミ袋に詰めて敷地の隅にポイ。
終了。
アントワーヌはその光景を見て、とてつもないショックを受けます。

田舎だからということではないですが、隣家主人にとってはワンコはその程度の存在だったと。
獣医がいるかも謎の小さい村で、家に繫いで丁寧に飼っていたわけでもなく、助かる見込みも少ないと思ったから処分したということでしょう。酷いですけど。
アントワーヌにとっては、唯一の癒しであったワンコがあっけなく殺されてしまった。
もののように。
その出来事は深い傷となって、その後の事件に繋がります。

森の奥、秘密基地を作っていた場所でやけ気味になっていたアントワーヌ。
そこにやって来たのは、隣家の息子、レミ。6歳。
アントワーヌはレミに対して、オデュッセウスへのやりきれない仕打ちについて詰問します。
気が付いた時には、レミの遺体が足元に。
怒りに身を任せて、アントワーヌはレミを殺してしまいます。

生き返らせることも出来ない、遺体が見つかったら自分はどうなる、捕まる?刑務所に入れられる。
6歳の子どもを12歳の少年が殺したなんて。
こんな小さな村がではすぐにニュースが隅々まで巡る。
そうなったら、たった1人の母親はどうなる?
生きていられないだろう、死んでしまう。

アントワーヌは必死に考えて、レミの遺体を森の奥にある裂け目に遺棄します。
ここからアントワーヌの非日常のような日常が始まります。

レミの失踪はすぐに発覚して、隣家には大勢の大人達が集まる、捜索隊が結成されて、村全体でレミを捜すことになります。
大人達はレミの生存を信じて捜している。
アントワーヌだけが、レミがすでに死んでいることを知っている。どこに死体があるのかも知っている。
レミと親交のあったアントワーヌも事情を聞かれますが、もちろん嘘をつきます。

少年だから、なのか。
アントワーヌの思考も行動も読みきれなかったです。
とにかく逃亡しようと準備するも子どもの身では出来ることが少ないと断念。
もうじきに捕まるだろうと覚悟したと思えば、レミの遺体も見つからないしアントワーヌがすぐに逮捕されることもないとわかるといつもの暮らしを送ったり。

罪悪感があるような、ないような。
行動力があるような、ないような。
見つからないならOKなのか、母親のためと言いながら自分の人生設計を優先して考えていたり。
意図せず殺人者になった少年って、こんな感じなんか??とぶちおは困惑しました。

レミ殺害に至った経緯も、レミ自身には何の落ち度もないわけです。
レミの父親がワンコを無残に殺したのであって、怒りの矛先が間違っている。
頭に血が上ったら、もうわけわからんくなるのか?
こんなタイプの主人公は久しぶりかもしれませんw

何度も自供するチャンスはあったけれど、告白に踏み切れなかったアントワーヌ。
レミ殺害を認めれば、ツラさから解放されるとわかっていても口を噤む。
剛胆なのか、ただの意気地なしなのか。計りきれない…

ちなみにぶちおは、セルフレジの操作ミスをして会計していない商品がありました。
帰宅後に買ったものとレシートを比較して発覚した時、ぶちおは狼狽しましたよ。
100円の商品でも、これは窃盗や!!!
やらかしちまった!わざとじゃないんだ!!

気付いたら、レシートに書かれていたお店の電話番号に連絡して自分の過ちを陳謝しました。
翌日には支払いに行きました。
スッキリ!
自分がやっちまったことは、自分でケリをつけるのが最高だと実感しました。

本作も他のルメートル作品のテンプレ通り、3部構成です。
1999年のレミ殺害事件発生から、2011年、2015年とアントワーヌの時間が進みます。
レミの遺族も、アントワーヌの母も、同じ時間が進みます。
小さい村で起きたから、時間が経過してもレミの事件の残り香が漂っているようで…

レミ殺害を隠しているアントワーヌには、試練が続きます。
時間が経ったからといって、事件そのものが無くなるわけではありません。

レミを遺棄した森の再開発によって、遂にレミの遺体が発見されることになります。
司法解剖で、レミが事故死したわけではないことが発覚。
さらに遺体からレミ以外のDNAが発見。
DNAがアントワーヌのものと特定されたわけではない、特定されたとしてもそれが即レミ殺害を断定する材料にはならない。
でも、隠し通せるという確約があるわけでもない。

何年経っても、アントワーヌはぐるぐるじくじく消耗していきます。
でも自分の生活もあるし、もしかしたら逃げきれる可能性も0ではない。
どうするのがいいのか。

アントワーヌはとてつもなくついていない男なのか、悪運の強い男なのか。

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小さな村で、何かが起きている系が好きです。

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まとめ

『僕が死んだあの森』
読了後、もう一度タイトルに戻ります。
このタイトルは、誰視点で言っているのか…
そのまま受け取れば、レミなのでしょうが、本編内ではレミの登場シーンは多くありません。

もしかしたら、あの森でレミを殺した時に死んだのは…

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