ぶちおの本棚

『人間標本』一番美しい姿を残したい。蝶博士と呼ばれた男は、少年達を昇華させる。それが使命だから。

ぶちおです。

今回は『人間標本』をご紹介しようと思います。
YouTubeをふらふらしていたら、アマプラの紹介動画があったので再生してみました。

再生したらもう物語が気になって気になって。
アマプラの配信を待っていられん!と思って原作をゲットした次第です。
イヤミスの女王、湊かなえ先生の作品ですから。
作品の狂気にもっていかれないように!

愛情の表現手段が、標本というカタチだった…

人間標本 (角川文庫)

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こんな人にオススメ

☆イヤミスが好物
☆グロ系OK
☆蝶々、虫系もOK
☆一番狂っているのは誰か見つけたい

書籍概要

◆作品名 人間標本
◆著者  湊 かなえ
◆出版社 KADOKAWA

イヤミスの女王、新たなる覚醒

人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな――。ひどく損壊された6人の少年の遺体が発見されると、社会はその事件の異様さに衝撃を受けた。大学の生物学科で蝶の研究をする榊史朗は、蝶の世界を渇望するあまり、息子を含む6人の少年たちを手にかけたと独白する。蝶に魅せられ、禁断の「標本」を作り上げたという男の手記には、理解しがたい欲求が記されていた……。耽美と狂おしさが激しく入り乱れる、慟哭のミステリ。

ぶちおの読書感想文

『人間標本』
なんたって、タイトルがずるいでしょう。
この四文字、パンチが強すぎるでしょう。
そしてまんまと引き寄せられた、蛾のごときぶちおです。

先にも紹介した映像化のPV。
ところどころ人間標本にされた少年たちのカットが入っているのですが、その色彩だけで作品を見たいと思いました。
原作通り、アクリルに収められて、最高な装飾をされて、素晴らしいロケーションで。
色ってこんなに綺麗なんだ、最高な瞬間を留めておける標本ってこんなに魅惑的なんだと。
美術館に所蔵されてもおかしくないくらい…
危ない危ない、蝶博士と同じ方向に突進していくところでした。
とはいえ、映像美は凄そうなのでアマプラで配信されたら見ますとも。

自然に美は溢れていますが、とくに蝶に魅入られた男・榊史朗。
父親は画家で人から距離をおくために山で暮らすことに。
子どもだった榊史朗は、そこでたくさんの蝶に出会います。

捕まえてはカゴに入れて愛でる。
でも蝶はすぐに弱って死んでしまう。
母親は、蝶は逃がしてあげなさいと教えます。
父親は、標本にする方法を教えます。
儚い蝶でも、標本にすることで美しさを保ち続ける方法がある。
榊は蝶に傾倒していきます。

子どもの頃、命に対して残酷だったりはあります。
意味もなくアリを踏むとか、トンボの翅をもぐとか。
イタズラに比べれば、勉強のため標本にすることは悪いことではありません。
収集し、学ぶ。
そんな経験から、榊は蝶博士と呼ばれるくらいの権威をもつ訳ですし。
興味があることは伸ばしてあげる方がよい、のですが。
標本とか剥製とか、学ぶ上では必要なこともありますが。
対象が人間になっちゃうのはちょっと…ヤバすぎるでしょう…

前半は『人間標本』と題した榊の手記が書かれています。
犯行の告白というか、記録というか。
息子を含んだ14歳の少年達、計6人を蝶のような装飾を施して標本にしたことを榊は投稿サイトに残しています。
この行動も、意味不明でしょう。
そこまでして自己顕示したかったのかと。

この手記部分、かなりメンタルをえぐってきます。
どういう思考でこんなことを起こしたのか。
榊の言葉で説明してくれてはいるのですが、普通の感覚ではちょっと理解不明な領域といいますか。
子どもの頃の思い出、父が残した想い、運命的な出会い、初めての作品、友との再会。
色々な要素が重なって、人間標本を作製するに至った。ぬうう。

しかも、実の息子も標本にしていますから。
死体を装飾したり、損壊もしている。ぐうう。

死者に鞭打つような行為を息子にするか?!
しかも不慮の事故死や病死などが死因ではなく、標本にするために意思をもって殺害しているわけです。
狂ってるんだろうけど、ただの狂人にも思えないところがまた怖い。

「こうしてあげることがいいんですよ」と教えられているような。

内臓がグッと重くなる感じ…
西島さんがどんな感じで榊を演じているのだろう…俄然気になります。

人間を標本にするにあたり、モチーフとなる蝶も登場します。
画像でどんな蝶か確認しながら読むのがオススメです。
近所で見られるのはモンシロチョウとかモンキチョウくらいなので、改めてこんなに綺麗な翅の蝶がいるんだなぁ~と。
ただ、最近の写真は精度凄いので、虫虫しいのがちょっと。
見えなくていい細部まで見えちゃって、引いちゃいましたw
ジャポニカの表紙の虫とか、めっちゃ好きで見ていたのになぁ。これも年かな。

榊の手記のあとは、真相フェーズに入ります。
榊という狂人が大量殺人を犯しました、では終わらない!
人間の負の部分がどんどん発覚、掘り起こされていきますから。
この乱高下に酔いそうだったぜ。

幸せな時間はあったんだものなぁ。

結局、何がきっかけとなってしまったのか。
誰が最初の絵を描いたのか。

いつか榊が救われる日はくるのでしょうか。
いや、このまま蝶を追って落ち続ける方が幸せなのかもしれん…

蝶と同じ、あの色覚の世界はどこにあったのか。

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