ぶちおの本棚

『SF・異色短編(1)』刺激が強めな藤子・F・不二雄作品に触れるなら。ifの世界線でも怖すぎる…

2024年12月18日

ぶちおです。

今回は『SF・異色短編(1) 藤子・F・不二雄大全集』をご紹介しようと思います。
書店員時代、この大全集の発売日を見守り続けていました。
本の大きさと厚さと重さと、予約の多さで毎月気絶していましたw
数冊購入するお客さまには、間違いなく宅配をお奨めした思い出です。

異色短編、本当に藤子先生作品なのか疑ってしまうくらい大人向けのヘビーな作品を楽しめます!
というか、お子様の閲覧はダメですとも。

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こんな人にオススメ

☆実は藤子作品にあまり触れていない
☆大人向けの内容ばっちこい
☆藤子先生の天才っぷりを全身に浴びたい
☆深く考察したい

書籍概要

◆作品名  SF・異色短編(1) 藤子・F・不二雄大全集
◆著者   藤子・F・不二雄
◆出版社  小学館

もう一つのライフワークSF短編の決定版!

児童誌を基盤に活躍していた藤子・F・不二雄が1969年に初めて青年向け漫画誌『ビッグコミック』に発表した「ミノタウロスの皿」。その記念碑的名作を筆頭に、「劇画オバQ」、「ノスタル爺」、「やすらぎの館」など、ビッグコミック連載作品の前半17作を発表順に収録(解説/鏡明)

ぶちおの読書感想文

『SF・異色短編(1) 藤子・F・不二雄大全集』
ぶちおが子どもの頃に通らなかった道、ジブリとアンパンマンとドラえもんです。
あまりハマらなかったらしく、テレビや映画やおもちゃもスルーしていました。
なんでだろう。
今でも謎ですが、国民的ロボットのドラえもんについても浅めに知っているくらいです。
ドラえもんの耳がネズミにかじられたことは知っています。

ちょっと藤子作品が気になってきたのは、本当にここ最近かもしれません。
ゲーム動画で気になった『ドラえもんのどら焼き屋さん物語
※HPはこちら

気付いたら購入して、フルコンプしていました。
藤子作品の多さとドットキャラの可愛さと、和菓子の深さに感動する面白いゲームでしたw
カイロソフトのゲームはかなり昔の携帯時代から追っていましたが、まさかドラえもんとコラボするとは!
ゲームをするとともに、どんどん作品が気になってくる…

そしてやっとこ!
今回、『SF・異色短編(1)』を読了しました。
予想していた何倍も濃くて、ブラックで、救いがなさ過ぎるところもしびれました。
これはもう、みんな大人は読みましょうと!

とくにお気に入りのお話のさわりをいくつか。

・ミノタウロスの皿
表紙に採用されているお話です。
綺麗な女性が跪いて、牛のような姿の者から戴冠しているシーン。
女性の名前はミノア。
大祭の主役に選ばれて、幸せの絶頂です。

ミノアが暮らしている星に不時着した男は、ミノア達に保護されます。
この星ではミノア達のような人と同じ姿をしている者は家畜で、牛のような姿をもっている者は支配層として家畜を管理しています。

地球と比べて、人間と牛の立場が逆転している。
ミノアは大祭で食べてもらえることを喜んでいますが、ミノアを助けたい男は逃げようと必死でミノアを説得します。
だけど、会話が成立しない。
地球でも同じように、牛を美味しいお肉になるように育てて食べるのに。
この星でも同じように暮らしているだけなのに。

・気楽に殺ろうよ
こちらも価値観がひっくり返った世界を見ることになります。
食べることは恥ずかしいこと、セックスはどこでもできちゃうこと、権利書があれば人を殺してもいいこと。

気付いたらこの逆転世界に迷いこんでしまった主人公は戸惑います。
暗いところでひっそりと食事をする。飲食店は駅前から消えている。食事に関することは小声で。

赤ん坊はゴミ箱にダンクして、すぐに変わりの子を作ろうとする。それも駅のホームで。
セックスは恥ずかしいことでもなんでもないので、子ども向けの絵本にも採用されちゃっています。
このあたりのセンスがさすが過ぎる!

医者に相談しても、はぐらかされているようでちっとも改善しない。
主人公も段々とおかしな世界に染まっていき、自分を貶めようとしている人を殺すことを決意してしまうのですが…

・コロリころげた木の根っこ
新人編集者が担当した大物先生は、DV炸裂で最悪な亭主です。
でも妻は静かに付き従っている。
明らかに歪な関係だけど、先生は誇らしく感じているようで。
妻を手なずけたのは俺だ、愛していることを妻もわかっていると。

う~ん、DV夫の都合がよい解釈だと思うのですが、夫の愛人が不穏な言葉を編集者に言い残します。
「先生、いつか奥さんに殺されるよ」
どういうこと?!と。
この家に関わっている人間は、まともじゃないのか。

編集者はずっと感じていた違和感に隠された事実に気付くのですが…

タイトルの『コロリころげた木の根っこ』は兎が出てくる童謡の歌詞でもあります。
兎が木の根っこに転ぶという童謡…
ぶちお、小学校の頃に歌ったあれや!と閃きました。

『待ちぼうけ』だ!!
冒頭の「待ちぼうけ~待ちぼうけ~」が、脳にしっかり記憶されていました。
調べて驚き、歌詞は北原白秋だと!?
凄い人が作っていたんだ…

元は中国の逸話、守株待兔だそうです。
人間って一度いいことがあると怠けがちだよね~。
二匹目のどじょうを狙って時間を空費するようなお話です。

それがDV夫と貞淑妻に、どう繋がるのか…

・ノスタル爺
タイトルだけ見た時は、ダジャレなんだと思いましたが、泣ける程にキました。
色々なところに伏線があって、ラストのコマの表情見たら切なさとかなんとも言えない複雑な気持ちになりました。

主人公の太吉は出兵から30年経って、ダムに沈んだ故郷に帰ってきました。
戦争で亡くなったとされていましたが、30年間もの間ジャングルで生き延びていたと。
しかし帰ってきた故郷にはすでに家もなく、出兵前に結婚した妻も亡くなっていた。

変わってしまった風景を見て回っているうちに、太吉は過去に戻ったような感覚になります。
水の底に沈んだ村は存在しているし、小さい頃の妻を見つけます。
どんどん過去を思い出す太吉。

30年前、祝言の夜。
自分は戦争で死ぬ可能性が高いから、自分自身の幸せを優先してくれと妻に諭していた時のことも。
その光景を近くの土蔵から見ていたじじいの存在も。
気が触れているから閉じ込められているというじじい。
大人しくて、害はないじじい。
でも、太吉と妻に泣きながら大声で怒鳴ってきたじじい。

1回読み終えたら、もう1回最初から読みたくなります。
結末を知った後だと、見えていたものの意味合いが変わってきます。

オバQや、ラーメン大好き小池さんも登場しますが、彼らもエッジが効いているので要注意です。
オバQが劇画になっているのですが、3本毛の覇気もなくなっているように見えましたw
メンタル不調が毛に出ているのかもしれません。

人口増加や、食糧危機、高齢化や子捨てなどの社会問題も刺しています。
藤子先生の画だからマイルドで読みやすい。
むしろありがたい。

どのお話も名作でした。

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まとめ

『SF・異色短編(1) 藤子・F・不二雄大全集』
衝撃。
短編だからこそ、読み手の想像力もかき立てられます。
急にエンディングが訪れて、その後に起こる出来事は無限に考えることができます。
もしかしたらハッピーエンドになる可能性だってあるかもしれない。

なるだけ藤子先生の意図を反映できるように綴じられています。
今の時代ならアウトな描写も表現も、そのままで良き。

藤子ワールドを知らない人にこそ、推したい短編集です。

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