『瑕死物件 209号室のアオイ』マンションの住人達が出会う男の子。あちらの世界の住人か…

ぶちおです。

今回は『瑕死物件 209号室のアオイ』をご紹介しようと思います。
Theホラー文庫という作品です。
舞台はマンション丸々一棟です。いやぁ～集合住宅独特の恐怖もあります。
何号室の○○さん、不幸だったわね～
何階の××さん、失踪したって本当かしら～

そんな井戸端会議にも怪奇の影が…

瑕死物件　２０９号室のアオイ (角川ホラー文庫)

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こんな人にオススメ

☆ホラー文庫の虜
☆ひとつなぎの怪異譚が好き
☆変貌していく人間を見たい
☆櫛木理宇先生が好き

書籍概要

◆作品名　瑕死物件 209号室のアオイ
◆著者　　櫛木理宇
◆出版社　 KADOKAWA

誰もが羨む、川沿いの瀟洒なマンション。
専業主婦の菜緒は、育児に無関心な夫と、
手のかかる息子に疲弊する日々。
しかし209号室に住む葵という少年が一家に「寄生」し、
日常は歪み始める。
キャリアウーマンの亜沙子、
結婚により高校生の義母となった千晶、
チョコレート依存の和葉。
女性たちの心の隙をつき、不幸に引きずり込む少年、「葵」。
彼が真に望むものとは？

恐怖と女の業、一縷の切なさが
入り交じる、衝撃のサスペンス！
Amazon『瑕死物件 209号室のアオイ』作品内容より

ぶちおの読書感想文

『瑕死物件 209号室のアオイ』
夏の日本家屋といえば、ホラーの祭典です。
ぶちおの祖父母宅も、絵に描いたような日本家屋だった時の夏の深夜は恐かったです。
近所との距離もあるので、自分しかいないような錯覚をします。
生温かい風、家鳴り、謎の影なんかがあれば、ホラー物語の序章が始まりそうですもの。

が、本作の舞台は夏でも、日本家屋でもありません。
四季を通じて、誰もがうらやむ素敵マンションが舞台です。
値のはるマンションだけあって、住人たちも品の良い人達ばかり。
現オーナーも管理人もしっかりしているので、ご近所トラブルの影すらありません。
そんなマンションに、出ます。
出ますよ、謎の少年が。

マンションの敷地内で見かける少年は、神出鬼没です。
どこの子か、どんな親なのかわからないけれど、同じマンションに住んでいると思うと懇意にするのがご近所づきあいです。
その少しの優しさが、破滅を招くことになります。

見た目が整ったその少年は、ある部屋の住人の子どもと仲良くなります。
少年の両親は仕事で家におらず、いつも１人で過ごしているとのこと。
それなら、少し家で遊んでいきなさい、と母親が提案したのが間違いでした。
少年は危険な遊びを子どもにけしかけたり、
子どもと一緒になって室内を汚したり、
食事も毎日のように食べていく…

たまにならいいけど、こう頻繁だとたまらない！
母親は我慢の限界で注意しますが、一向に少年の行動は改善されません。
それどころか、少年は父親と子どもを味方につけて、母親１人を排除しようとします。
ちょっとしたご近所トラブル、たまにいる非常識な家庭の子、と思っていたら…

少年は他の家庭にも入り込みます。
いつも家にいる専業主婦としてのみ生きてきた姑のもとに。
姑は息子の嫁に孫を産んで欲しいと無言の圧をかけるも、嫁はやんわり交わしてばかり。
それなら、この少年を自分の孫のように可愛がっていいじゃない！
嫁は他人の子どもを誘拐した姑の対応に苦慮します。
犯罪がばれたら、身の破滅。
だけど、少年はもちろん普通ではないので…

自分にとって家とは、家庭とは何か。
家族と幸せに暮らしたい、
仕事帰りに寝るだけの場所、
やむをえない事情で血の繋がりのない人と過ごす場所、などなど。

アオイと名乗る少年は、どうしてこのマンションに出没するのか。
アオイの目的、アオイがつけいる家にはどんな共通点があるのでしょうか。