ぶちおの本棚

『スワン』誰のための追求なのか。何のための追究なのか。生存者たちが隠したかった事とは

2024年9月21日

ぶちおです。

今回は『スワン』
作者の呉 勝浩の『爆弾』で『このミステリーがすごい! 2023年版』『ミステリが読みたい! 2023年版』国内篇で驚異の2冠を達成されました。
『爆弾』はポチり済で未読ですが、まずは『スワン』を読もうと思い読了しました。

解決した事件の中にあった1人の遺体には、ちょっとした違和感が…
凄惨な事件現場から逃げ延びた5人の被害者たちは、何を知っているのか。

隠蔽、捏造、偽証をした方がいいこともあるのかもしれない。

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こんな人にオススメ

☆人間のいいとこ、わるいところを両方堪能したい
☆一方的に批判する民が嫌い
☆凄惨な事件描写も平気
☆緊急時には、しょうがないことがあると理解できる

書籍概要

◆作品名  スワン
◆著者   呉 勝浩
◆出版社  KADOKAWA

ショッピングモール「スワン」で無差別銃撃事件が発生した。死傷者40名に迫る大惨事を生き延びた高校生のいずみは、同じ事件の被害者で同級生の小梢から、保身のために人質を見捨てたことを暴露される。被害者から一転して非難の的になったいずみのもとに、ある日一通の招待状が届いた。5人の事件関係者が集められた「お茶会」の目的は、残された謎の解明だというが……。文学賞2冠を果たした、慟哭必至のミステリ。

ぶちおの読書感想文

『スワン』
結末が気になり過ぎて、読み始めたら止まりませんでした!
何を隠しているのか、どうして隠す必要があるのか。
犯人を名指しするのではなく、登場人物たちの秘密を見つけていくのが面白かったです。
一見、無関係そうな事柄でも、最後にはしっかりと回収されていて大満足!

多数の批判に理不尽にさらされる被害者たちを思うと、グッとくるものがありました。
当事者以外は黙ってろ!と言いたいことがある世の中を映しているなぁと。

物語は4月に起きた無差別殺傷事件から始まります。
大型商業施設「スワン」で起きた、犯人たちによる一方的な銃撃事件。
犯人は銃を自作、予備の武器に日本刀を装備して、ゴーグルにカメラを仕込んで録画しながら凶行に及びます。

たくさんの人が集まっていたスワンは、一瞬にして地獄絵図に変わります。
逃げ惑う人々の混乱、鼻歌まじりに銃を撃ち続ける犯人。
犯人たちは、最後には自殺をして事件は終わりを迎えます。
死者21名、重軽傷者17名。
この最悪な事件の生存者の1人、いずみが主人公です。

事件から半年後、いずみは徳下という弁護士から「お茶会」に誘われます。
お茶会にはいずみを含めて、5人が集められていました。
顔も名前も知らない他人同士、共通点はあの事件の日にスワンにいたということ。

いずみ以外の参加者4名は下記、名前は仮名を名乗っている可能性もあります。
頑固で正義一徹な老人、保坂。
野暮ったい印象のある中年女性、生田。
軽薄な雰囲気のある営業マン、波多野。
がたいがよくて、見た目は強そうな印象の道山。

無差別銃撃事件の被害者である菊乃という老婦人の死に残されていた違和感を解明するため、
生存者たちに当時の状況を語ってもらう場がこのお茶会です。

菊乃が犯人の1人に銃撃されて死んだのは間違いない。
銃撃されたのは、1階のエレベーター乗り場。
けれど、事件発生時には安全だった上階ラウンジにいた菊乃がどうして1階にいたのか。
倒れていた体の向きも、スワンから逃げようとしていたと考えると矛盾している。
菊乃の遺族は、この引っかかりをどうしても解明したいと。

お茶会メンバーは、事件発生時刻からスワンのどこで何をしていたかを話すのですが…
黙秘がいたり、曖昧な証言を繰り返したりと非協力的なメンバーが出てきます。
もちろん、いずみ自身もどこまで本当のことを話しているのかは謎です。
ただ、黙秘したりごまかすからには何か理由があるわけですよ!
もしかしたら、5人の中に菊乃の殺害に関わった人がいるのか。
それとも、他の犯罪行為が絡んでいるのか??!!

ハラハラが止まりませんとも。
やましいことって、何でしょう。

事件はとんでもない非常事態下でした。
歩いているだけで撃たれる、理由もなく犯人は追ってきて殺そうとしてくる。
そんな状況で、まともな判断をくだせるのか。
てか、「まとも」な判断って何でしょう。

生存者たちは、たられば論や結果論に振り回されます。
犯人はたった2人だったんだから、警備員でも制圧できただろ!警察の初動も遅いぞ!
→結果的に犯人は2人だった。しかし、事件発生時は他にも仲間がいた可能性もあったし、もっと大きいテロの危険性もあった。容易に動ける状況ではなかった。

犯人に脅されていたとはいえ、無抵抗な人が殺されるのを黙って見ていたなんて同罪だ!
→自分にも銃口が向いた状況で、まともな会話ができない犯人に対して、女子高生にできることなんてあったのか。一緒に死ねばよかったのか。

事件から生還したのに、世間の誹謗中傷にさらされる。
はい、外野は何でも言えるよねと。
知らないから好き勝手にはやしたてるし、弁解しても説明しても、何をしたって批判される。

いずみも大量に被害者が出てしまったラウンジの生存者ということで、好奇の目にさらされます。
普通の暮らしには戻れない。
何より犯人たちだけが悪者なのに~
罰を与える相手を間違ってやいないかい。

しかし!いずみも全て本当のことを話してはいません。
誰かに真実を話す必要もないのですが、菊乃の検証をしていくうちに少しずつ因果関係が…

あの事件に巻き込まれていて起こったことは、普通じゃない状況だったから。
割り切れたら、こんなにツライこともないんやろうなぁ。
犯人死亡というのも、怒りのもっていきどころがないのかもです。
だから生還した人に、どうしてあの人を見捨てたんだって八つ当たりしたくなっちゃう。
本当のこと教えてくれと強く言ってしまう。

お茶会を通して、菊乃の死の真相は明らかになるのですが、それがまた…
極限状態の人間は、たとえ危険な行動だとしても反射で動くのかもしれません。
人間のいいところも、わるいところも明らかにしたのがスワンの事件だったのかな。
それぞれの隠し事もわかると、またやるせない…

「白鳥の湖」のオディールを演じられるのは、演じるべきは誰だったのか。

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まとめ

『スワン』
犯人たちが使っていた自作の銃の装填数は2。
2発発射したら終わり、使い切りタイプの銃でした。

しかし、ラウンジで発見された最後に使用された銃の残数がおかしい。
いずみが見ていた光景と矛盾している?
近距離で無抵抗な大人を1発で仕留めていた犯人だが、2発も撃たれた被害者がいる。
それはなぜか。

あの事件には、一部の生存者しか知らない事実が隠されている。

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