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『法廷占拠 爆弾2』タゴサク節ふたたび!法廷にいた全員が人質、もちろん被告のタゴサクも。

ぶちおです。

今回は『法廷占拠 爆弾2』をご紹介しようと思います。
前作の内容に触れますので、『爆弾』未読の方、ネタバレNGな方は引き返してくださいませ。

前作で逮捕された最悪の爆弾犯、スズキタゴサク。
しっかり裁判にかけられています。
その裁判所がまさか、新たな爆弾犯によって占拠されてしまうとは。

要求は死刑囚の即時死刑執行。

※『爆弾』感想文はこちら

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こんな人にオススメ

☆『爆弾』を読了した
☆前作の登場人物たちのその後が気になる
☆タゴサク節をまた浴びたい
☆犯人達の目的を見抜きたい

書籍概要

◆作品名 法廷占拠 爆弾2
◆著者  呉勝浩
◆出版社 講談社

史上最悪の爆弾魔が囚われた。
そのとき新たな悪が生まれた。

東京地方裁判所、104号法廷。
史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、突如銃を持ったテロリストが乱入し、法廷を瞬く間に占拠した。
「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放します」前代未聞の籠城事件が発生した。
スズキタゴサクも巻き込んだ、警察とテロリストの戦いが再び始まる!

ぶちおの読書感想文

『法廷占拠 爆弾2』
スズキタゴサクをまた見られるとは!
あの独特な思考回路と語り口調。
逮捕されて裁判にかけられても健在です。

スズキタゴサクは本名なのかも未確定。
それでも重大すぎる事件を巻き起こした重要人物には違いない。
前作の爆弾事件で、3ケタに迫る死亡者数。
重軽傷者は500人を超える。
とんでもない悪意をばらまいたタゴサク。

裁判への注目度も高い。
傍聴席は毎回抽選。
被害者遺族や記者も入り、証言者として捜査関係者で埋まる傍聴席。

タゴサクを擁護したり崇拝するような人達も現われています。
注目度が高かったり、異様な事件を起こした犯人にはこういう人達の援助がつく。
タゴサクの犯罪に同情の余地ないじゃろ!と思っても、タゴサクのある種のカリスマ性は認めざるをえません。
捉えどころのないヴィラン、それがタゴサクじゃ。

裁判が始まってしばらく、傍聴席から声が発せられたのを皮切りに、法廷が占拠されてしまいます。
遺族席にいた男が爆弾と思しきものを見せつけ、法廷内の人すべてを人質にとります。
裁判官も弁護人も傍聴人も、証人として呼ばれていた刑事も。
法廷占拠は外にも伝わり、ここから警察と爆弾犯の頭脳戦が始まります。

そもそも立てこもりの成功率は低い。
人質がいるから警察も無茶なことをしてこないですが、犯人の負担もでかいです。
籠城する時間が長いほど、疲弊します。
お腹も減るし、喉も渇くし、トイレにも行きたいし、眠くもなる。

短期決戦ではないが、長期決戦でもない。
長期になると人質の体力も心配だし、要求が通らないことで犠牲者が出る可能性もある。
警察が捜査に使える時間は多くはない。
出来るだけ短時間で犯人の思考を解体しなくては。
家族関係、職場、家を捜査して何か掴めるのか。

タゴサクファンによる事件なのか?と思ったのですが、どうやらそうではないらしい。
タゴサクも皆と一緒。
巻き込まれて、なんなら犯人によってボコられます。
犯人の忠告を無視して、タゴサク節を披露しちゃうんだもの。
大人しくできない、不要だとわかってても口を開いちゃう。
ボコられるタゴサクを見ても、身動きは取れないままです。

犯人の人数や装備もわからないまま、警察と人質達にとって地獄のような時間が続きます。
犯人の要求は、死刑囚の即時死刑執行。
死刑囚の死刑執行人数分、人質を解放すると。

死刑は確定したら半年以内に執行しないといけないのに、守られていない。
これはおかしいではないか。
要求は、あくまで法律を遵守しろというのみ。
違法でもなんでもないだろうと。

日本の刑って甘いよね、とは思います。
海外の懲役300年とか見ると、うらやましいと思っちゃう。
死刑の是非は難しいけど、終身刑はあってもいいと思っちゃう。
刑務所のキャパ問題とかあると思いますが、無期懲役じゃ償いきれないことってあるだろう。
刑期を終えても、再犯するやつ多いし。
軽めの犯罪を繰り返して、最終的には重犯罪にいっちゃうとか。

何の罪もない人質の命より、死刑囚の命の方が軽いだろう。

しかし、犯人が個人的に早く執行して欲しい死刑囚がいる様子もない。
死刑囚なら誰でもいい。
ということはこの要求はブラフで、別の思惑があるはず。

前作でも命は平等ではない、優先順位があるのが普通というのがありましたが、今作でも同じような問いかけが。
ただ、犯人の苦労と比較して、要求がズレているような。
約100人の人質をコントロールするのは大変。
逃げ切れるのも難しい。

お馴染みの警察も登場します。

タゴサクの話術に嵌められた伊勢は、証人として傍聴席に。
得意のタイピングを披露できないし、どこか冷たい印象の伊勢ですが警察だから!
緊急事態のこの法廷で頼れる、のか。

伊勢と同じく証人として召喚されていた倖田。
タゴサクのせいで犠牲になった同僚、タゴサクへの怒りは消えていません。
タゴサクを殺そうとして対峙した時、倖田から向けられた殺意にタゴサクはご機嫌でした。
傍聴席の最前列にいたことで、タゴサクも倖田の存在を認識します。

タゴサクとやりあえる唯一の人物、類家。
今作でもぼふぼふ天パで、空気を読まないスタイルで犯人の交渉を見守ります。
爆弾があるのは法廷内とは限らない。
タゴサクの事件のように、また日本全国を対象としたテロの可能性も捨てられない。

ただ、前作の事件ではタゴサクに完全勝利をすることが出来ませんでした。
思考を読み切れず、後手に回ってしまった。
甚大な被害を生んでしまった。
その被害から新たな犯罪が起こってしまった。
類家はタゴサクとはまた違う犯人を捕まえられるのか。
警察のルールを守っていては、真相を掴み損ねる。
類家がやるべきことは、いつもギリギリです。

警察との会話で、犯人が語る思い出。
交渉役の人間性を知りたがる。
なりたかった職業、などなど。
事件とは関係なさそうな会話も何かのヒント、暗喩なのか。
ぶちおも読みながら可能性を考えますが、思考が定まらない。
疑いだしたらキリがないんだもの!!!!

タゴサクというと、犯人にボコられたりもあって口数は少なめです。
あのタゴサク節は感じられますが、犯人も付き合う余裕がないのでボコって黙らせる。
タゴサクはこの法廷占拠とは無関係なのか、確定できない状況が続きますが
収容されているタゴサクがこんな事件を起こすなんてさすがに出来ないか。

前作の事件だって、タゴサクはあくまで乗っかっただけ。
自分でゼロから犯行計画を立てたわけではない。

タゴサクは他人の悪意に乗っかるのがうまいだけ。
悪意を育てて、広めるのが上手なだけ。
タゴサクの他愛のない言葉が、弱っている人の内面にすべりこんでくる。

倖田も、人質を守るのは警察である自分の職務だとわかっている。
でも同時に、こんな事件を防げなかった警察は無能だと責められると分かっている。
犯人と同じ法廷内にいながら、みすみす占拠を許してしまった使えない警察だと。

一般人より警察である自分が矢面に立つのは当たり前。
犯人を制圧したいという使命感ももっているのに、守ろうとしている一般人から容赦ない非難を浴びる。
なんで自分が命までかけて頑張る必要性があるんだろう。
自分が痛めつけられても警察だから当然だ、と周囲には思われているのに。

犯人が意図してなのか、今回も倖田のSAN値がぐんぐん削られていきます。
タゴサクと絡んでから、いいことがない!

犯罪をする人の言い分、犯人の独白シーンがあります。
が、全然共感できなかったです!
結局、うじうじして犯罪に手を染めるのが悪いんじゃろと。
環境のせいにして、自分で何とかする術を探せなかった責任問題は本人にあるやろと。

犯行に及ぶことになった不遇な幼少期とか、毒親の影響とか、不平等な社会への不満とか。
わかるけども!
わかるけど、だからといって爆弾作って見ず知らずの人が被害に遭うのをわかって爆破する、にはいってはいけないじゃろう。
そんな一般論もわかった上で、犯人は許せないと言っているので平行線の議論…

ねじ曲がった犯人、ではありますがラストを読むと犯人にも少しだけ救われる部分はあったと感じました。
人間味を捨てきれなかった人。

ん?タゴサクは。
タゴサクは人のよさそうな笑顔、ぽっこりお腹、おちゃめな発言もしますが、人間味あったかな…

否。

タゴサクは最凶系のおじさんです。

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神奈川県警刑事・彦坂は、青ざめる。その男こそ、5年前、組織ぐるみで隠蔽した事件の関係者だったのだ。

まとめ

『法廷占拠 爆弾2』
犯行目的も嘘くさい。
所持している爆弾は本物なのか。
法廷の外にも犯人の仲間はいるかもしれない。
いや、法廷の中に犯人の協力者がいる可能性もある。

タゴサクはどういうポジションなのか。
犯人はタゴサクの事件の被害者遺族というだけなのか。

タゴサクには検討する余地がありすぎるんだなぁ。

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