ぶちおの本棚

『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。』文字には書いた瞬間の感情も、書き手の生き方すらも写される。

ぶちおです。

今回は『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。』をご紹介しようと思います。
シリーズ1作目。
不躾に触れようとするものには容赦ないが、見目麗しい筆跡鑑定人。

文字から始まる謎解きが始まります。

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こんな人にオススメ

☆文字の魅力に気付いている
☆ツンツンからの、ほんのり甘みを感じたい
☆ケンカップルっていいね
☆日常に潜むミステリを読みたい

書籍概要

◆作品名 筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。
◆著者  谷春慶
◆出版社 宝島社

祖父が残した謎を解き明かすべく、美咲は大学一の有名人、東雲清一郎を訪ねるが、噂に違わぬ変人で……。著名な書道家なのに文字を書かず、端正な顔立ちから放たれるのはシビアな毒舌。挫けそうになるも、どうにか清一郎を説得。鑑定に持ち込むが――「気持ちに嘘はつけても、文字は偽れない。本当にいいんだな?」。鎌倉を舞台に巻き起こる文字と書、人の想いにまつわる4つの事件を描く、連作短編ミステリー。

ぶちおの読書感想文

『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。』
イケメンだけど、コミュニケーションスキルがど底辺の東雲清一郎。
書道部に在席してはいるけど、字を書いている姿は見たことがない。
だけど天才らしい。
筆跡を見て、書いた人物像を読み取れる筆跡鑑定の力もあります。

ただし、清一郎に絡みに行った人はほぼ返り討ちにされます。
会話もままならない!
そのため、鑑定人としての能力を知っている人もごく僅か。

大学生らしくない、大学生。
ちょっともう世捨て人の香りすらしちゃうんじゃないかと心配しちゃうぞ、清一郎。

亡くなった祖父の恋文の存在を知った美咲は、清一郎に恋文の筆跡鑑定を依頼します。
祖父は祖母一筋だと思っていたのに、残されていた恋文の宛先には祖母以外の女性の名前が。
あんなに仲が良かった祖父母、祖父が祖母を裏切っていたわけがない。
この恋文には、何かの事情があるはず!
そう、書いたのは祖父ではない可能性だってある。

しかし鑑定の結果は、美咲を喜ばせるようなものではなく…

本作には4編が収録されています。
上記で少しふれた、清一郎と美咲の出会い。美咲の祖父の恋文の謎。

美咲の友人を弄んだのは清一郎?!清一郎には一切覚えがないというけれど。
どうにか友人を励ましたい美咲は、清一郎(?)が残したという依頼メモの謎を解明していきます。

清一郎と美咲は、有名な書家が残した作品のタイトルを調べることに。
前衛的な書の作品は、一見何の文字が書かれているかわからない。
文字の成り立ち、過去の作品からもヒントを得て謎を解く。

美咲が何者かから嫌がらせを受けている。エスカレートして看過できないくらいに。
美咲の背中に貼られた悪意の張り紙。
文字の癖から、犯人捜しが始まります。

清一郎と美咲、性格も思考回路もまったく違う二人ですが謎を通して、少し。
ちょ~っとずつ相互理解、歩み寄りをしていきます。

清一郎の気難しさは大学でも有名。
初対面での暴言もデフォルト。
もちろん美咲の清一郎への最初の印象は最悪からスタートします。
しかし文字に対しての真摯な姿勢を見ていき、難ありの性格もすべてが分からないというわけでもないと。
印象最悪から始まる物語、いいやん!

清一郎のトゲトゲハリネズミっぷりが、最終話を読み終える頃には可愛いと思えるでしょうw
孤高の天才肌・清一郎から漏れ出る、ちょいデレ要素はご馳走です。
口ではそう言ってても、優しいやん!とか、
最初の頃よりも、ワードチョイスの癖が丸くなってるやん!とか。

テーマは文字。
科捜研とかでも筆跡鑑定がありますが、なかなか証拠直結にはならないらしいです。
DNAとか指紋と違って、多少工作が出来ちゃう。
膨大な文字のデータがあってこそ、正確性もあがる。
イマドキ手書き文字が膨大に残っている人はそういないですからね~
昔の文豪の手紙、とかなら役立ちそうな気もします。

読んでいって、書道の時間を思い出しました。
ぶちおは書道教室にも通っていたんや、小さい時に。
墨、新聞紙の匂いに包まれて、畳の上で正座をして文字を書いていました。
硬筆、毛筆、両方ならっていましたが、最低限の知識やマナーを覚えたくらい。
本気で文字うまくなるぞ!!とはなかなかなりませんでした。
なるだけ花丸はもらいたいし、手本通りに書きたいけど我が出ちゃうw
ゆっくり時間をかけて書くよりも、速記したい欲求が強かったなぁ。

結果、硬筆はミミズがのたくる。
毛筆の方が得意でした。
それとなく上手く見えるポイントは学べたんだと思います。

トメ、ハネ、ハライを意識する。
バランスを考える。
出すところは出す、出さないところは出さない。
字の中の棒の長短や大きさも、見本の通りに書く。
これを意識すれば、そんなに悪筆にはならないはず。

本作を読むと、清一郎による筆跡鑑定のコツを教えてもらえます。
偏と旁のバランスであったり、書き順や誤字の癖など。
知らず知らずのうちに、自分なりの癖が文字に出てしまうと。

日本人は、ひらがな、カタカナ、漢字、数字、アルファベットなどなどいくつもの文字を書き分けています。
そのすべての文字が一致するのは、ほぼありえない。

調べるべき人物の範囲を絞り、おおよその見当が付けられれば事件解決はすぐそこ!
清一郎はこともなげに謎を解いていきます。
隣で見ている美咲は、どうして?なんでわかったの?の連続ですがそれがワトソンのお仕事です。
気付けばいいタッグになっているのもお決まりです。

悪筆だから悪い人、ではない。
綺麗な文字を書く人はいい人、ではない。
ですが一般的な人よりも、良くも悪くもどこか突出している人の字は癖が強い傾向があります。
海外のシリアルキラーの手紙とか目にしたことがありますが、やっぱ癖つよでした。

性格が多少なりとも字に反映されるのは納得。
そして字を書いている時の気持ちも、文字に反映されます。
文章の内容、文字に込める思い、その時の体調、同じ人が書き手でも同じ文字を書けるわけではない。

テストの時、自信のない答えは小さく、筆圧も薄くなった記憶ないでしょうか?
ぶちおはありますw
いつもはこんな簡単な問題くそだな!くらいの勢いで書き殴っていましたが、もうお手上げだという時はうっすいw
もうハズレてるんだから無回答で出したって変わらないかもだけど、とりあえず回答欄をうめる。
ワンチャン当たるかもしれない。と思ってうっすい文字で回答w
採点する先生も笑っただろうと思います。
清一郎に見られて、この時のしょうもない心理を言い当てられたら、穴に隠れたいぜ。

1作目を読んだら、次が気になる…
これ以上、文字にどんなミステリがあるんやと気になります。
清一郎がもつ文字の力も、まだまだ未知数。

大人になって、あんまり文字書かないんだよな~と思った人は、ちょこっと文房具を揃えて久しぶりに文字を書いてみましょう。
意外にスッキリします。
文字は人を表わすこともある。

自分どんな文字を書く人間か、振り返ってみましょう。

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まとめ

『筆跡鑑定人・東雲清一郎は、書を書かない。』
手書きの文字にはたくさんの情報が含まれています。
感情だだ漏らし文字にはご注意を!

清一郎がトゲトゲしいのも理由がある。
聞いてもすんなり教えてはくれないですが。
美咲の猪突っぷりで、段々と清一郎のガードが崩れていきます。

腰が重いくせ者には、裏表なしの素直凸が一番かも。

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