ぶちおの本棚

『涙子さまの言う通り』死を悼むため、美しく涙を流す美少女。彼女の周囲には異様な程に濃い死の影が…

ぶちおです。

今回は『涙子さまの言う通り』をご紹介しようと思います。
全3巻。
妖しい会員制のサロンで絶対に当たる預言を授ける犬養涙子。
彼女の力を本物たらしめるのは。

事件を追う刑事は、涙子の涙の真意を知ることになる。

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こんな人にオススメ

☆昭和初期の時代が好き
☆妖艶さに怪しさを含む美少女がタイプ
☆とにかく屍はあったっていい
☆土着信仰や、伝承が気になる

書籍概要

◆作品名 涙子さまの言う通り
◆著者  山本 ルンルン
◆出版社 KADOKAWA

聖女か、それとも殺人鬼か?

昭和初期。都内某所で少女の水死体が発見された。
捜査担当の沢渡巡査は、ある新興宗教の教祖・犬養涙子に目をつけるが……。

長い黒髪を靡かせ微笑む少女は、果たして聖女か、それとも殺人鬼か?
山本ルンルンが描く、ホラーサスペンス!

ぶちおの読書感想文

『涙子さまの言う通り』
ぶちお、初めて山本ルンルン先生作品を読みました!
店頭書店員時代の同僚で、とにかく山本ルンルン先生大好きっこがいたのでお名前は覚えていました。
とにかく表紙から可愛い、ポップな作品のイメージだったので、ぶちおはなかなか読む機会がなく。
そして、まさかのホラーサスペンス作品があると知り、しかもちょうど完結したタイミングだったのでゲット&読了!
昭和初期の雰囲気の中、とんでもない死屍累々っぷりに驚嘆しました。

追われる者。犬養涙子。
慈愛の涙という会員制のサロンで、会員から相談料をもらい助言をしています。
会員は政財界の大物や、社会的地位の高い人達ばかり。
どれだけ高いお金を支払おうと、涙子の助言が外れたことはない。
とにかく言う通りにしていれば人生うまくいく!

一見、報酬と引き換えに人のためにアドバイスをしている涙子ですが、彼女の周りには不可解な事件が多い。
サロンの会員が行方不明になる、屋敷で働いていた女中が寝間着のまま水死体で発見される。
通っている女学院でも不可解な自死が起こる。
涙子には、何かあるに違いない。

追う者。沢渡警部補。
涙子の屋敷で働いていた女中の死体を見て、小さいところが気になります。
体全体にケモノに付けられたような傷がある。
野犬の仕業かという予測も出来るが、毛には艶がある。
どこかいいところで飼われている犬のものではないのか。

そして身なりにそぐわないペンダント。
ペンダントには慈愛の涙の紋章が刻まれていたので、関与を疑うことになります。

涙子と沢渡警部のチェイスが始まります。
警察でも手が出しにくい涙子。
もしかしたら、警察の上層部にも涙子の力が及んでいるかもしれない。
捜査許可もおりないが、涙子の怪しさに本能的に沢渡は気付いています。

もしかしたら二人は似ているのかもしれない。
だから相手のことが分かってしまう、ような。
近づき過ぎると危険と知りつつも、涙子のことを調べずにはいられない。

科学捜査なんてありませんからね、この時代。
刑事の洞察力、そして第6感が本当に頼りだぞ!
誰もが納得できる証拠はあるのか。
動きあぐねている沢渡と、挑発的な涙子の対比が面白い。

見た目にも美人、さらに超常的な力がある少女を追い詰めるのはかなり大変。
涙子に出会った人は、すっと心を奪われてしまう。
とくに誰かの悲しみに寄り添って泣いてくれる涙子の姿は神にも見えるから…

涙子は犬神憑きの家系。
犬神の作り方はなかなかショッキング。
そう、可愛いイラストのイメージでいるとグロめの描写が多めで驚きます。
首を××という行為が、かなり重要なので…

昔は流行り病も天災も、悪霊や憑き物のせいにするしかなかったものなぁ。
祟りをおさめる方法は…
軽いお供えものでいければいいですが、とにかく酷い状況になった時は人命をもって祈るしかないと。
人柱とかとんでもない風習に思えるけど、とにかく無事を願うならこういう犠牲を出さないと安心できなかったのでしょう。
供物として捧げられる方も、みんなのことを思ったら犠牲になってもいいと思えたんでしょうか。

涙子を指導していた祖母は、土地に縛られた生き方を捨てて外の世界に出ます。
仲がよかった一人の女性とともに。
犬神の血を継いだ涙子が生まれて安心と思っていましたが、涙子を抱いた時に祖母は恐怖を感じた様子で…

子どもの頃の涙子は、首を××ことで魂を救えると思っていました。
そういうしきたりがあったのだから、涙子を責めることは出来ません。
でも、涙子は根っからの邪悪だったのかもしれない。
だから祖母は、怯えながらも涙子をどうするのが幸せなのか悩んでいたのかもしれない。

あの時、涙子に然るべき対応をしていたら、被害は拡大しなかったのに。
誰が涙子を生かしてしまったのか。
涙子の過去を知ることで、一層何が悪かったのかわからなくなりました。

神事として、自分のカリスマ性を担保するため、サロンの経営を維持するため、
結局はすべて自己のため、涙子は邪魔者を排除しなければいけない。

でも、ちょろちょろと動き回る沢渡。
あまり派手に事を起こしても逃げ切れない。
ギリギリ尻尾を掴まれない程度に、涙子の力を維持する。
涙子の意地悪さすら綺麗に思えてしまう。

根っから明るい美女よりも、何か影がある美女の方が気になっちゃうアレです。
刑事として事件を解決したい沢渡ですが、彼には家族がいます。仲間もいます。
守りたい者にも、容赦なく涙子が手を出すことは想像できる。
本当にギリギリのチェイス!
ひりひりしたぜ。
これ以上死人出さないでくれ!と願いつつも、涙子の方が何枚も上手。
捜査をやめるという選択肢はもうない。

作中に陰獣事件について、ちょろっと出てきます。
本当にあった陰獣事件。
遺体の数カ所が持ち去られた女性の遺体。
頭部は後日、別の場所から発見されるも皮が剥ぎ取られ、耳も目も一部がなくなっていた。
容疑者の男は自殺した状態で見つかりますが、頭部には女性の頭部の皮膚をかぶっていて、持ち去っていた遺体の一部は保存していた。

連続殺人とか、凄惨な殺人というと海外のシリアルキラーのイメージが強いですが昔の日本でも衝撃事件は起きています。
阿部定事件とかも。
涙子の事件はもちろんフィクションですが、混乱期の日本にも深い闇はあったんだなぁと。

見てはいけない、近づいてはいけない涙子の深淵。
ただ、こんなことが続くわけもなく終わりは唐突にやってきます。
こういう閉ざされた屋敷内で活躍するのは女中と決まっていますもの!

外から屋敷に入れないのであれば、屋敷内で働いている女中と協力をするのがカギ!
沢渡が見つけた最初の遺体も、涙子の屋敷で働く女中でした。
女子の絆を侮ってはいけません。
絶対的権力の破滅は、こういうところから始まっちゃうのです。

沢渡とともに、追いかけ抜く覚悟があるのならぜひ!

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『涙子さまの言う通り』を読んで、山本ルンルン先生作品から選書していました。

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大人になったら消えてしまう魔法の力…この世界ではそんな魔法の力を持った女の子が時々誕生します。
「魔女の子」すみれが引っ越してきたにわとこ町には、他にもたくさんの魔女の子が住んでいました。

まとめ

『涙子さまの言う通り』
艶やかな黒髪、女学生の清らかさ、まだ幼さが残っているのに、どこか抗えない魅惑がある。
それは影で生殺与奪をふるっているからか。
どんな大人でも手玉にとってしまう、持って生まれた才能のせいなのか。

何重にも感情を押し殺して隠して生きるのが人間。
自分の感情は乏しくても、人間を徹底的に観察することで別の生き物になったか。

涙子さまの言う通りに、従うべきかそれとも。

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