ぶちおの本棚

『人間に向いてない』人から異形へと変貌する。社会的弱者たちがかかる新たな病

2024年8月18日

ぶちおです。

今回は『人間に向いてない』をご紹介します。
メフィスト賞受賞作の小説です。

原因不明、治療法不明、法整備も追いつかない厄介な病が蔓延します。
意思疎通がはかれない異形となった家族を、自分だったらどうするか。
または、自分自身が異形になってしまったら、家族達はどう対応してくれるのか。

家族といえども、他人っちゃ他人!

人間に向いてない (講談社文庫)

新品価格
¥836から
(2024/8/4 01:09時点)

こんな人にオススメ

☆人間以外もやってみてもいい
☆家族ってなんだろうと迷子だったことがある
☆子どもだったなぁ
☆未知で怪奇な病でも、立ち向かいたい

書籍概要

◆作品名  人間に向いてない
◆著者   黒澤いづみ
◆出版社  講談社

「今年(2018年)読んだ本の中で、私のベスト3に入る1冊!」――宮部みゆき(単行本帯コメントより)
話題騒然のメフィスト賞受賞作。読者から届いた熱い、熱い声。続々重版出来。

子供を殺す前に。親に殺される前に。
すべての「向いてない人」に捧ぐ、禁断のオゾミス、または落涙の家族サスペンス!

一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる奇病「異形性変異症候群」。
この世にも奇妙な病が蔓延する日本で、家族は。

ある日、美晴の息子の部屋を、気味の悪いクリーチャーが徘徊していた。
――冗談でしょう。まさか、うちのユウくんも・・・!!??
そこから平凡な家族の、壮絶な戦いが幕を開ける。

ぶちおの読書感想文

『人間に向いてない』
病気の名前は「異形性変異症候群」
姿形が人間以外の何か、まったく別モノに変わってしまう病気。

犬のようだったり、イソギンチャクのようだったり、植物のようだったり。
『のよう』な異形の姿です。
カワイイ犬、鑑賞が楽しいイソギンチャク、ではないです。
人間だった頃のパーツをところどころに残した、
生理的にNGを出す人100%!もはや怪物のよう。

人間としての知性や感情が残っているのかも謎、変異後は言葉で会話することも難しいです。

若年層の男女で引きこもりやニート状態の罹患者が多い傾向というのはわかっています。
が、
感染する病気なのか、若者以外にもかかる可能性はないのか、新しい病なので情報量もとにかく少ない。
ただ、日本全国に蔓延していて罹患者も増えていく、対応はしなければならない。

国としてはひとまず、「異形性変異症候群」に罹患した人は死亡したモノとして扱うことが決定されます。
酷ですが、家族が変異後の患者を殺害したとしても、養育を放棄して処分したとしても、責任はうまれません。
もう人間としては亡くなっているわけなので。

怪物のような見た目になってしまって、治療法もわからない。
未知の病気にかかった患者達の家族の絶望を思うと、非人道的行為を簡単に責めることは出来ませんもの。

病気の認知度が低い時には、まさか目の前にいるのが自分の家族と気付かずに駆除してしまったということもあったらしい。
ゾンビのように、人の時の面影を多少残してくれていたらまだしも、
全然別種の生き物になられたら…

主人公の美晴にも、引きこもりとなった一人息子がいます。
ある日、胸騒ぎがして息子の部屋を開けたら、おぞましい虫のような姿の怪物がいる。
美晴は息子が「異形性変異症候群」になってしまったことに動揺しながら、今後のことについて模索していきます。
夫は暗に処分しろと言います、もう法律上は死亡したんだと。

20歳をこえての引きこもり。
正直、家族としてはお荷物といえます。
働かない、親のすねかじり、親に何かあったとしても自力で生きていけない。
こんな病気にかかったのも、本人が悪いんじゃないか。

美晴は夫と違って、そんなにすぐに割り切れません。
相談先はないのか、同じ悩みを持っている人はいないのか、
専業主婦で世間ずれしているところもある美晴ですが、息子のために奮闘します。

症例がいくつか出てきます。
「異形性変異症候群」といっても、どういう姿になるかは生前の性格に影響されていそうとか。
異形は異形同士、意思疎通をとっているのではないかとか。
反応は薄いけど、もしかしたら人語を理解しているのではないか。
治療法も見つかるのではないか。
美晴をはじめ、子どもが異形になってしまった親たちの葛藤があります。

どんな姿になっても、我が子だもの!と胸アツ展開あり!
と思ったら、まぁそんな綺麗ごとだけで終わるわけもなく。

あれ?このモノローグ誰のだ?と思う部分もちょっと推理すればわかります。
あぁ~あの人も苦しんでたんだなぁ~

親の教育方針や些細な言動で、子どもは予想外の道に行ったりします。
親としては子どもに苦労してほしくないから、勉強しろ、いいとこ就職しろ、と言っちゃう。
でも子どもからしたら、とてつもないプレッシャーで疲れちゃう。
親はわかってくれないと不満を募らせたり。

この話を読んでいて、ぶちおは小学時代の同級生を思い出しました。
Nちゃんとします。
Nちゃんには3歳上のお姉さんがいて、ぶちおのご近所に住んでいました。
お母さんが教育熱心で、文武両道がモットー。
Nちゃんはお姉さんとお母さんと一緒に、朝早くからジョギング、
塾には行かずに、放課後は家でみっちり勉強というスケジュール。

ぶちおの家に来て遊んでいる時に、初めて『志村けんのバカ殿様』を見たと発覚しました!
聞くとNちゃんの家ではNHKと教育テレビのみ視聴出来るそう。
それ以外は見ると頭が悪くなる、ということらしいです。

放課後、ぶちおと帰っている時に、クラスの男子がふざけて給食袋でNちゃんを叩いたことがありました。
じゃれあいレベルだったのですが、その日の夜にNちゃんのお母さんがぶちお宅に襲来!
Nちゃんを殴った男子の名前を全員教えて欲しいと。
ぶちお母もぶちおも驚きましたとも。
Nちゃんのお母さんは、男子全員の家に電話して謝らせるんだと激おこしていました。
大事な娘を傷付けられて憤慨!という感じは分かりますが、ちょっと過剰だなと。

子ども心に、Nちゃんのお母さんは娘達が生きがいなんだなぁ~ということはわかりました。

小学校の卒業式の日、式場の体育館の後方で金髪の女性がNちゃんに手を振っていました。
Nちゃんは気付いてちょっと俯いていたけど、その金髪の女性はNちゃんのお姉さんでした。
ピアスもがっつり。
ライターカチカチ鳴らして。
かなり近寄りがたい状態に仕上がっていました。
そう、Nちゃんのお姉さんは、しっかりグレました。

あのお母さんのプレッシャーでお姉さんそうなったんだなぁ~と、みんなが気付いた瞬間です。
卒業式といえど、平日の昼間、本来ならお姉さんは学校がある時間なのに。
またたく間に、Nちゃん家の醜聞として広まりました。

モンペ気味だったお母さんなので、味方もいなくて、そして大人にとっては面白いコンテンツでしかないです。
「あんなに熱心に教育してたのに、お姉さんがああなっちゃったらね~」
「Nちゃんも可哀想ね~」
中学校にあがってすぐ、Nちゃんは引っ越しました。

親が子どもに期待するのは仕方ないけど、
子どもに意見を押しつけるとやっぱなっちゃうんだな~と謎に納得したぶちおです。
いわゆる毒親だったのかな。
でも子どものためなんだから優秀であってほしいというのもわからんくは…うーん。

無関心もだめ、過干渉もだめ。
家族って、単純なようで単純じゃない。

人間に向いてない (講談社文庫)

新品価格
¥836から
(2024/8/4 01:09時点)

こんな漫画もおすすめ

『人間に向いてない』を読んで、家族ってむずいよね系な作品から選書してみました。

毒親に育てられた私が母になる (LScomic)

新品価格
¥1,455から
(2024/8/4 02:03時点)

『毒親に育てられた私が母になる』
私は毒親に育てられ、母と縁をきった。
そしてそれ以来一切連絡をとっていない。そんな私が母になった。

虐待父がようやく死んだ (バンブーコミックス エッセイセレクション)

新品価格
¥327から
(2024/8/4 02:04時点)

『虐待父がようやく死んだ』
父の死は私の“希望”。
虐待を受け育った作者が描くコミックエッセイ。
暴力・性的虐待・面前DV・人格否定。
――父が私にしたこと。これが、私の日常だった。

「子供を殺してください」という親たち 15巻 (バンチコミックス)

新品価格
¥776から
(2024/8/4 02:05時点)

『「子供を殺してください」という親たち』
家族や周囲の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いし、ゴミに埋もれて生活する娘…。
現代社会の裏側に潜む家族の闇と病理を抉り、その先に光を当てる――!!

家族対抗殺戮合戦 10巻(完) (バンチコミックス)

新品価格
¥752から
(2024/8/4 02:07時点)

『家族対抗殺戮合戦』
戸惑いの中、呼び集められた場所にいたのは7つの家族と巨大な人形たち。
そして始まる強制参加のレクリエーション。
逃げることは許されず、勝てば豪華賞品、最下位は罰ゲーム。家族会議で一人を生贄に!?

まとめ

『人間に向いてない』
家族といえど、結局は他人。
親の思い通りにはいかない、子どもの考えていることがわからない。

美晴も同じ境遇の人と話をすれば救われると思っていたけど、解決していっている手ごたえがない。
こんな活動内容で、息子が元に戻る保証もない。
意味があることをしたいのに、うまくいかない。
何もしないままなんて耐えられない。

変えなければ、
変わらなければ。

人間に向いてない (講談社文庫)

新品価格
¥836から
(2024/8/4 01:09時点)

~ぶちおのYouTubeはこちら
~ぶちおのグッズはこちら
📚ぶちおの本棚記事一覧はこちら
🐥鳥記事一覧はこちら
🌞日常記事一覧はこちら
✨劇団四季一覧はこちら

-ぶちおの本棚
-