ぶちおです。
おすすめ小説のご紹介です！
今回は『死体を買う男』
歌野晶午先生作品は、『密室殺人ゲーム王手飛車取り』が大好きです。
リアル書店員時代に『葉桜の季節に君を想うということ』が賞を獲得したので、本を売りまくった思い出も懐かしいです。
先輩書店員が本当に絶賛していました。
作家名から検索して、タイトルでぐっと来たという動機で手に取りました。
意外な登場人物でわくてか、そしてラストまで読んだらすぐに冒頭に戻り、噛みしめました。
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こんな人にオススメ
☆作中作形式にびんびん来る
☆江戸川乱歩と萩原朔太郎タッグの活躍を見たい
☆どんでん返しはもちろん欲しい
☆タイトル名をじっくりしがみたい
書籍概要
◆作品名 死体を買う男
◆著者 歌野晶午
◆出版社 講談社
乱歩の未発表作品が発見された!? 「白骨記」というタイトルで雑誌に掲載されるや大反響を呼ぶ――南紀・白浜で女装の学生が首吊り自殺を遂げる。男は、毎夜月を見て泣いていたという。乱歩と詩人萩原朔太郎が事件の謎に挑む本格推理。実は、この作品には二重三重のカラクリが隠されていた。奇想の歌野ワールド！
Amazon『死体を買う男』作品内容より
ぶちおの読書感想文
『死体を買う男』
本作は作中作の形式がとられています。
１つは『白骨記』というミステリ小説、
もう１つは作者である細見が、『白骨記』を手に入れるまでの経緯についてが書かれています。
『白骨鬼』は全3回の連載作であったにもかかわらず、最終回の3回目がいつまで経っても発表されないといういわく付きの小説です。
刊行している出版社の煽り文句や文体から想像するに、この『白骨記』の作者はあの江戸川乱歩の自伝的小説なのではないか？
細見は連載の内容を見てそう推理し、『白骨記』の作者自身に真相を確かめようとするのですが…
表紙に描かれている２人の男性、ミステリ好きなら誰のモチーフかわかります。
名探偵ホームズと助手のワトソン。
『白骨鬼』の中で登場する名探偵タッグは、なんと江戸川乱歩と萩原朔太郎です。
乱歩がホームズかなと思ったら逆で、詩人の朔太郎がごりごり謎解きを主導していきます。
乱歩は自身の作風に似合わず、うじうじとしていて朔太郎にビシバシされます。
この時代の文豪たちの先輩後輩感というか、家を行き来して作品とは違う面に触れたりとかの空気感も楽しいです。
２人が追うのは、乱歩が遭遇した事件。
作品を書けないことに苦悩して自殺を考えた乱歩は、紀伊に赴きます。
崖から身投げをしようとしていた乱歩を助けたのは、通りすがりの美青年の塚本直。
自殺しようとした自分を恥ずかしいと思い、咄嗟に取材のためだったと嘘をつきます。
自殺をやめて宿に戻ると、奇妙な話を女中から聞きます。
離れに泊まっている客は気味が悪い。
男性客なのだが、夜な夜な女物の着物を着て化粧をしては月を見て泣いている。
発する声も脳天から無理矢理出しだような気味の悪い音色で…
月恋病の患者なのだろうと。
当然離れの客が当然気になり、夜に離れに向かうと本当に女中の言った通りの月恋病にかかった男を見つけます。
その顔は、先刻自分の命を助けてくれた塚本直だったのです！
翌朝、塚本直が崖で自殺をしたと騒動になり、乱歩は事件の真相を朔太郎と検討していくことになります。
朔太郎の詩になぞらえて、塚本直は死んだらしいのですから…
崖の木にロープをかけて首をくくり、祈るような姿勢で死んでいた…
しかしロープは千切れ、死体は崖下に落ちてしまい見つかってはいない。
乱歩も思いますよ。
本当は死んでいないんじゃないかと。
でもしっかり数ヶ月後、白骨になった塚本直が発見されます。
DNA検査がない時代ですが、血液型鑑定、白骨が来ていた着物、復顔の結果から塚本直に違いないとなります。
これはもう手詰まりですね。
死んでいなかったと思っていた重要人物は、やっぱり死んでいたのです。
乱歩&朔太郎の謎解き炸裂が『白骨記』の発表された部分になります。
エンタメがつまっておりますねｗ
乱歩あるあるも多分に含まれているので、乱歩好きには刺さると思いますｗ
屋根裏の散歩者、人間椅子、パノラマ島奇譚などをネタにして朔太郎がきゃっきゃしているのは微笑ましかったです。
乱歩ネタに気づけるだけでウフフとなりました。
ぶちおもいつか乱歩あるあるを日常生活に取り入れたいと思います。
さて、もう１つの細見視点の物語も重要です。
冒頭で細見は自分が『白骨記』を手に入れるまでの経緯については読み飛ばして構わないと言っていますが、
そうはいきません！
連載が完結していない作品に何があったのか。
このままでは『白骨記』の犯人自体も迷宮入りになってしまいますから！
細見と『白骨記』作者のやりとりに中にも、重要な手がかりがないわけがないです。
『白骨記』自体は、不思議な事件ではありますがトリックについてはぶちお、ピンと来ていました。
メカテックがない時代なので、ずるいぞテクノロジー！！みたいなことはありません。
(塚本直がロボだったとか、見ていたものは全部ホログラムだったとかなら許しません)
犯人の目星もトリックもある程度は気づけると思います。
が！
そんな簡単な話で終わるわけないですよね～
第四章、終章で冷水をぶっかけられましたｗ
答えははじめから提示されていたのだよ、ワトソン君。と言われたような気がして撃沈です。
すべての謎が解けると、登場人物たちの行動の見え方が変わります。
真相を知ったあとにまた違う味を感じられる素敵作品でした。
乱歩界隈の時代を楽しむことも出来ます。
『白骨記』は乱歩が作ったということになっているので、表記方法が独特で新鮮でした。
『白骨記』と、細見の物語の結末をぜひ。
こんな漫画もおすすめ
『死体を買う男』を読んで、乱歩に朔太郎と魅力炸裂キャラが登場したので関連書籍を選書してみました。
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『月に吠えらんねえ』
萩原朔太郎と聞いたら真っ先にこちらの作品が出てきました。
史実に沿ってではなく、詩人の印象をキャラクター化した作品です。
詩の傾向でなんとなく人物像もわかりますものね。
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『文豪ストレイドッグス』
もはや文豪が登場といったら、はずせません。
気付いたらもう20巻をこえる大作になっていました。
キラキラ文豪たちの活躍は、目の保養にもなりますぞい。
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『パノラマ島綺譚』
乱歩作品のコミカライズです。
丸尾末広先生の筆致がどはまりしています。
１人の青年の夢が実現した先は…
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『江戸川乱歩異人館』
乱歩作品を元にしたコミカライズです。
有名作品から、短編作品まで、知らない乱歩に出会えるかもしれません。
名探偵明智の変装の巧みっぷりに感動です。
まとめ
『死体を買う男』
連載されない最終回、月を見て泣く男、文豪タッグの謎解き、名前も明かされていない作者…
真相を隠そうとしていたのは、誰だったのか。
犯人の告白を聞いた上で、どうすることが良かったのか。
どうしていたら良かったのか。
そしてやっぱり乱歩と朔太郎によるタッグは最強でした。
画像検索しましたものｗ
このタッグ、ドラマとかになってくれないかな～
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