ぶちおの本棚

『正体』脱獄した死刑囚。彼は逃走中に何をしようとしていたのか。空白の期間から真意を探る。

ぶちおです。

今回は『正体』をご紹介しようと思います。
ドラマ化、映画化された話題作ということで!

脱獄死刑囚、しかも捕まった時は18歳。
彼は一体どんな人間だったのか、どうして残酷な事件を起こしたのか。
なぜ、逃げたのか。

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こんな人にオススメ

☆人間の矛盾を考えたい
☆やるせなさを浴びたい
☆悪人を見分ける能力があると思っている
☆限界を知りたい

書籍概要

◆作品名 正体
◆著者  光文社
◆出版社 染井 為人

埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!

ぶちおの読書感想文

『正体』
読了後は、なんか悲しさと何とも言えない虚しさと。
やったーーー!という前向きな気持ちは沸いてこず。
この結末に至るまでにどうにかならなかったのかと、やるせなさと言いますか。
ちゃんとした大人がいたらなぁ~と、無念さが強かったやもしれん…

でも今の制度的には、それが限界なのかという歯がゆさというか。
むぅ。

一家三人を殺害した死刑囚、鏑木慶一。
鏑木は事件当時18歳、帰り道の途中で民家に入り包丁で住人を殺害。
何の罪もない住人を三人も殺害、うち一人は2歳の子ども。
犯行の残虐性が分かります。

2人以上殺害すると死刑の可能性がある、というのが日本の通例といいますか。
今回は無抵抗な小さい子どもまで手にかけているとなると、厳罰感情に傾きます。
18歳とはいえ、人を殺すことが悪いことくらい分かるだろう!

ぶちお的には被害者が1人だった場合、最も重い判決で無期懲役というのも納得いかないですが。
誰かを意図的に殺したら、それはもう人数関係なく死刑も考慮していいんやないかと思うぶちお。
犯人を死刑にしても被害者が戻るわけではないけど、誰かの手によって人生を終わらせられるという恐怖を味わうべき。

犯行後すぐに身柄が確保された鏑木ですが、容疑を否認したと思ったら認める発言をして、また一転無罪を主張したり。
結果として死刑判決が下りますが、監視の目をかいくぐって逃走。
日本中がその行方を捜している状況です。

本作は鏑木の逃走生活を辿っていくものになっています。
鏑木のニュースを見ている一般の反応とか、鏑木本人と気付かずに一緒に働いたりした人達の様子を見る。

逃走犯って、意外と捕まらないですよね。
顔写真も掲示されて、懸賞金がかけられて、メディアで報道されてもなかなか捕まらない。
2024年には桐島聡容疑者が話題にあがっていました。
40年も神奈川に潜伏して、普通に働いて生活をして、最後は病気で。
病気がきっかけで判明しましたが、逆に健康なままだったら今でもわからなかったのでは…

多少は顔を変えられます。
ダマで整形をする医者もいるし、メイクもあるし、自分で顔をいじることもやろうと思えば出来る。
偽名でも働けちゃうし、溶け込めてしまえれば逃亡生活も出来てしまうということなのか…

ましてや、自分の横にいる人が極悪犯なわけがないというバイアスがかかっているのも要因かもしれません。

鏑木も全国5カ所を渡り歩きながら生活をしていました。
ブラックめいている工事の下請け会社や、住み込みの旅館などで。
人手不足だったり、適当な派遣会社の斡旋だったりで、なんやかんやで食い扶持を稼ぎつつも、
鏑木は何か目的があるように動いている様子があります。
ただ逃走するだけ、ではなく。

職場での鏑木の評価は上々、たまに不思議な行動もありますが許容範囲内。
いてくれて助かるといわれる人物です。
なんならちょっと人助けまでしています。

読んでいくうちに、こんなに賢くて、人との関係性も程よい感じに築けるのに、どうして無残な方法で人を殺したのか。動機がわからない。
やった犯罪と人物像が一致しないまま、警察の手も近づいてくる。
そしてまた逃走するの繰り返し。

鏑木の気持ちはほとんど書かれていません。
最後の告白を知って、鏑木は不幸な青年だったなぁと。
逃亡を選択するしかなかったというのが。
出会い運がとことん悪かったのか…
逆転裁判のナルホドくんと出会えていたら、もっといい結末になったんだろうと思いました。

警察組織や司法の問題もあります。
誤認逮捕とか、冤罪とか。
世論に流されてはいけないのに、注目度の高い凶悪事件は早い解決を焦ってしまい誤った判断をしてしまう。

鏑木が起こした事件は、本当に彼が犯人だったのか。
鏑木は無実を訴えていた。
しかし判決は下された。

ぶちおも行政書士のお勉強中に、判例をよく見ます。
過去の判例を踏襲していて、試験対策としても判例を頭にぶっこみましょうと。
見ると昭和30年の判例とかあります。
今は名前を変えている法律を、裁判所はどう判じたのかを覚えると。

正直、何年前の話してるねん!なわけです。
でも令和の今でも過去の判例を念頭において、勉強します。

裁判所が一度出した判決を覆すのは相当大変!
出来ないわけではないけれど、やっぱりあの判決違ってました~なんて軽く出せるものではない。
人の人生がかかってるんだから。
それは裁判には時間もかかるでしょう。
時間をかけて出した判決でも、人がやることだから間違えることはあるかもしれない。

私人間同士であれば謝ることも出来るし、関係修復も可能です。
でも司法だと…鏑木は国から死になさいと言われたわけで。
逃亡したくもなる、そのままいたら殺されるんだから。

いや、それでも逃亡がいいわけはない。
逃亡によって新たに傷つく人だって増えたじゃない。
う~ん、かといってそのまま死刑を受け入れろも違うし。
ぐあああああああ!という感じで揺さぶられます。

多くの第三者は好き勝手なこと言っていますし。
本人を深く知らずともニュースを見て、こんな奴とっとと捕まえて死刑で償うべきと放言することもある。
鏑木の見た目がいいから、ファンクラブのような支援団体が出来たりも。

鏑木と接したことがあり擁護している人は、あの子は悪い子じゃないと。
ただ悪いことする良い人もいるんやでとも思うし。
死刑になりたくないから、良い人を演じている可能性だってある。
現実に被害者は出ているから、犯人は必ずいる。
それが現場にいた鏑木ではないという証拠がないではないか。

エピローグを読んで、手放しでは喜べなかったのは確か。
副題が、「白日」となっているので救われたかな。

鏑木の行動について、たらればを言い出したらキリがないくらいですが、良き仲間が持てたのは幸せじゃよ!

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『正体』の作者、染井 為人先生の作品から選書してみました。

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震災の町で芸能界の仕事をする娘を苦々しく思う父親。
元芸能マネージャーの著者が、リアルな芸能界の世界に迫る!

まとめ

『正体』
タイトルの意味をどこまでも追っていきたくなりました。
正体はなんだったのか。
正体を見抜ける、見分けられる他者なんているのでしょうか。

報いる人達の戦い。

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