ぶちおの本棚

『わたしの人形は良い人形』その人形は自分の役割をただ全うしたいだけ。受け継がれてしまった呪物。

2024年11月4日

ぶちおです。

今回は『わたしの人形は良い人形』をご紹介しようと思っています。
山岸凉子先生の過去作品も、どんどん電子化されて嬉しいばかり!
初出は1980年前後の作品、紙本でもお目にかかれなかった作品を読める時代が来たー!

書店員時代、テレプシコーラの補充をどれだけ気にしていたことか。
思い出深い先生の一人です。
バレエのイメージが強かったですが、ホラー系もこれまた。

単巻ホラーは何冊あったっていい。

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こんな人にオススメ

☆単巻でさくっと楽しみたい
☆人形がこわいと思ったことがある
☆懐かしの作品に触れたい
☆山岸先生の電子化に心躍った

書籍概要

◆作品名  わたしの人形は良い人形
◆著者   山岸凉子
◆出版社  講談社

疎開先から帰ってきた可愛らしい日本人形。しかし、その後忌まわしい出来事が……。表題作のほか、海で遭難した男が流れ着いた島で見たものは? 『バンシー』、『グール』の2作品を収録。

ぶちおの読書感想文

『わたしの人形は良い人形』
ページを進めてすぐに、童謡『わたしの人形は良い人形』の歌詞が載っています。
あ、タイトルはこの童謡からきたんだと知ったぶちお、まずは童謡から聞いてみようと音源を探しました。

YouTube動画を見つけたので、早速拝聴。
ホラー漫画の題材になったんだから、なかなかヘビイでメロウな曲なのかと思ったのですが明るい童謡でした!
お人形を可愛がっている様子を歌った、微笑ましい曲じゃん!
よし、予習は出来たので続きを読んでいくことに。

あの明るい歌声を裏切る、ホラー展開ありがとうございます。
古い人形が出たら、それはもう始まっています。
関わった人達は詰んでいるといっても過言ではありません。

人形の存在意義とは。
おもちゃとしてはもちろんですが、副葬品に使用された歴史もあります。
依り代として、呪術に使われることも。
人と同じ形を模しているもの、というだけで怖さポイントがあがっていきます…

本作のタイトル作品にも、古い市松人形が登場します。
人形の持ち主である竹内家の隣家、野本家の少女が事故で亡くなってしまいます。
少女の死因を見過ごしてしまったことを悔いて、竹内家は野本家に市松人形を贈ります。
「1人で旅立つのは寂しいでしょう、この人形をお友達として一緒に棺に入れてあげてください」
まさに副葬品としての役目です。
このお人形をあげるから、生きている人をあの世に連れていったりはしないでねというお願いの意味もこめて。

しかし、立派な人形なので野本家の家人は棺に入れずにこっそりと人形を保管してしまいます。
こうなったら、怪異発芽待ち状態です。
ここで最初の希望通り、棺と一緒に燃やしていればこの後に起こる悲劇は防げたことでしょう…
大体、欲出すとろくなことにならないです。

時は経ち、人形が人の前に現われる日がやってきます。
当時の禍根について何も知らない主人公、野本陽子。
隠されるようにしてあった人形を出してしまったその時から、家では怪奇現象が起きるようになります。
はい、怪異発動しましたよ!

人形はしゃべらないので、余計に怖い。
殺人鬼とかデスゲーム主催者ならまだ会話が出来る余地がありますが、人形は表情もないし返事もない。
一方通行のコミュニケーションが、どれだけSAN値を削っていくか!

誰もいないはずなのに、物が動くのは当然。
謎の音が聞こえてくる。
人形自身が襲いかかってくる。
陽子はメンタルを削られながらも、人形対策に出るのですが…
一般的女子がどこまでこの人形に立ち向かえるのか。

殺人鬼の魂が入ってしまった人形、チャッキーを思い出しました。
しゃかりきに家人を襲う姿。

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でも海外の人形のお話は、なんだかんだでちょっとコミカルっぽさを感じます。
チャッキーも後半はなんか嫁とか出来てたしw
どんだけ頑張っても、結局人間に負けてたしw

比較対象がちょっとあれかもですが、何か日本の動く呪いの人形にはコミカルさが足りないのかな~
あんまり、人間に友好的な人形の話を見たことがない気がします。

ぶちおの家にも、古い市松人形がありました。
透明なケースにしっかり入れられていて、金屏風みたいな背景もあって、○○作と書かれた木の板も入っていました。
きちんとした鑑賞用の市松人形だったのですが、やっぱり怖かったw
毛も人毛のように見えたし、眼球も光ってみるし、睫毛とかまゆ毛も丁寧に描かれていたので。
リアル感もあいまって、可愛いとか綺麗よりも怖い気持ちが勝っていました。
大人になると怖さはなくなりましたが、子ども時代はもうなるだけ目を合わさないように暮らしていました。

海外モチーフだと、電池式で動く妖精の格好をした人形も持っていました。
スイッチを入れると音楽が鳴りながら、首をゆっくり回す人形。
ある日、壊れました。
音は倍速に流れて、首の動きも歪に倍速に回るようになりました。
はい恐怖!!
思えば、こんなことがあったのでぶちおはシルバニアファミリー派になりました。
動物であれば、恐怖は半減した気になりました。
手のひらサイズというのも安心したのかもしれません。

読了後は、人形への思いも馳せちゃいました。

本作には他2編も収録されています。
人の死を叫び声で予告するバンシーの物語。
バンシーの声が聞こえたら、その家には近いうちに死人が出るという伝承があります。
窓の外で叫び声をあげ続けるバンシーの思いとは。

最後は食人鬼グールの物語。
難破して打ち上げられた浜辺には、たった1人の女性。
女性は定期的に怪我をしていて、無人島から脱出する気力もない様子…
男性はその女性の真意を図ろうとするのですが。

山岸ホラーを堪能しましょう。

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父に連れられて出仕した朝廷で、10歳の少年、厩戸王子と出会う。
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『鬼』
M美大のサークル“不思議圏”は、埋もれた故事、遺跡を求めてとある寺で合宿することになったのだが……。
表題作のほか、家の習わしである好みを食べた少女の物語『時じくの香の木の実』、『ある夜に』の2作品を収録。

まとめ

『わたしの人形は良い人形』
代々受け継がれているものには、いいものもあれば、悪いものもあるかもしれない。
供養の仕方を待ちがえれば、とんでもないバッドエンドに直結してしまうかもしれない。

何にでも魂が宿る、それが日本流なのです…

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