ぶちおの本棚

『奇譚蒐集録―弔い少女の鎮魂歌―』村に伝わる化物の話は、真実なのか。本物の鬼に会いたい。

2024年10月29日

ぶちおです。

今回は『奇譚蒐集録―弔い少女の鎮魂歌―』をご紹介しようと思います。
新潮nexレーベルで書誌上だとラノベとなっていますが、ミステリありホラーありです。
昔話、伝承、逸話、日本各地に残る不思議な話の発端を調べていくと、タブーが見えてくることもある。

一晩で村人30人以上を素手で殺したという鬼は、本当にいたのか。

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こんな人にオススメ

☆怪奇現象が好き
☆グロめの因習も大好き
☆大正時代に心躍る
☆イケメンコンビの活躍が見たい

書籍概要

◆作品名  奇譚蒐集録―弔い少女の鎮魂歌―
◆著者   清水朔
◆出版社  新潮社

骸を撫でる少女たちは皆十八で呪の痣に殺される大正二年、帝大講師・南辺田廣章と書生・山内真汐は南洋の孤島に上陸した。この島に伝わる“黄泉がえり”伝承と、奇怪な葬送儀礼を調査するために。亡骸の四肢の骨を抜く過酷な葬礼を担う「御骨子」と呼ばれる少女たちは皆、体に呪いの痣が現れ、十八歳になると忽然と姿を消す。その中でただひとり、痣が無い少女がいた。その名はアザカ。島と少女に秘められた謎を暴く民俗学ミステリ。

ぶちおの読書感想文

『奇譚蒐集録―弔い少女の鎮魂歌―』
ラストはじんわり、泣けました…
知らなくていいことと、知ったからには取らないといけない責任があるなぁと。
君子危うきに近寄らずとは、よく言ったものやで!
危なそうなものに自ら近寄ったら、厄介ごとに巻き込まれても文句は言えません。

帝大講師・南辺田廣章と書生・山内真汐の2人が、とある村の葬儀の儀式を見たいと船で向かいます。
村は独自の文化を築いています。
大正時代なので、日本といえども地方によっては外国のような雰囲気。
言葉や服装は沖縄っぽさが強めの村です。

かたや、東京から来た南辺田はハイセンスの塊!
洋装を着こなして、黒檀ステッキに帽子。
身長も180cm近いので、かなり目を引く存在です。
本物の鬼を見たいという目標をもった、イケメンだけど変わった人。
お世話役の真汐も、南辺田とともに儀式の調査をしていくのですが。

葬儀の風習は場所や時代によって様々。
ぶちおは鳥葬を知った時、驚きでした!
鳥に遺体を食べてもらって鳥の糧にしてもらい、空へ還る。
鳥葬を行う時は事前に色々な準備があると知ってまた驚き。
そのままだと鳥が食べにくいので、食べやすくする作業があるとか。
でもここ最近は、鳥もなかなか食べてくれないとか。
これも時代の流れでしょうか…

日本にも遺骨を噛むというものがあったり、かつてのエジプトは遺体をミイラにして保存したり。
亡くなった人の身分や関係性によって、弔い方も様々です。
その時その時の死生観に基づいた行動が形式化されて儀式として残り受け継がれていくと。

本作で語られる独特の儀式。
遺体を一度、浜辺の洞窟に安置します。
時間を経たら棺から遺体を取り出して、海で洗骨をする。
遺体は虫などによってボロボロの状態でも、一部骨に皮膚が残っています。
それを海の水で洗って清めます。
南辺田は洗骨された骨を見て気付きます。
【骨が足りない】

葬儀の儀式を担当するのは「御骨子」と呼ばれる少女たち。
少女たちを観察すると、方言から島の子どもではないようだし、彼女達の四肢には青い入れ墨のような痕がついている。
この痕は、儀式を重ねる度に濃くなっていき、呪いされています。
呪いが満ちると青の怪物に変貌して人を襲ってしまうため、18歳を迎えたら天の川を渡る儀式に臨むというのですが…

南辺田は「御骨子」の出自や、痣の発症原因についても調べていきます。
葬儀は死者を悼んで行っているものなのに、彼女達が呪われるのは整合性がとれない。
青の怪物とは、かつてこの島に現われて島民を惨殺した怪物と言われているが、その怪物は本当にいたのか。
怪物が現われる前に島に流れ着いたという男女は何者か。
女は託宣を詠んで怪物の来訪を告げ、男は暴れ回った怪物を討ち取ったという。

怪しさ満載の過去の出来事が、今の儀式にどういう影響を与えたのか!
怖い話から、ロジックで解明されていくのがわくわくです。

自分の知識外のことは、呪いとか祟りで片付けちゃいたいのもの。
死者が墓から蘇って襲ってくると言われたら、ちゃんと弔わないとと思うもの。

なんだかんだで験担ぎしちゃうし。
でも、元を辿っていったらただの見間違いに尾ひれがついただけだったり、不都合なことを隠すための作り話だったり。
過去の真相を辿っていくのがいかに難しいか。

儀式を担当する「御骨子」は過酷な儀式に従事しているだけなのに、島民の子ども達からはいじめられることもしばしば。
でも、死人が出たら頭を下げて「御骨子」に儀式を依頼する。
う~ん、相反してますね、人間の行動は。

「御骨子」の1人、アザカという少女は南辺田と真汐に協力してくれます。
他の「御骨子」と違い、場数を多く踏んで儀式にも慣れている。
遺骨を怖いとも思わない。
骨抜きの儀式の時には、誰よりも早く作業を行う。
職人とも呼べるアザカが、真汐と仲良くなっていくのもほほえまし!

慣例や慣習は、少し見方を変えると意味なくない?と思うこともあります。
ブラック校則・社則と言われるものも慣例や慣習です。
一番後輩が一番先に出社しないといけないって何?
廊下ですれ違う先輩には、道を空けて挨拶しないといけないって何?
などなどw
起源を遡っていくと、そうしないといけない理由なんてないのがほとんどです。

自分の時もそうやってきた、とか。
そう教えられたからそうするべきと思ってた、とか。
脳を動かさないと!
どんな時でも、なんでなんで?の精神は大事です。

なんでなんで?の先に、忘れてはいけない事実が見つけることが大事。
たくさんの疑問を抱いた南辺田が、この島で見つけたこととは。

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成功すれば願いが叶うが、怖いものに遭うという噂もあって……

まとめ

『奇譚蒐集録―弔い少女の鎮魂歌―』
葬儀の儀式に隠された秘密。
秘密を作ったのは誰の仕業か。

秘密を暴いた後に起こること。
信じてきたものに裏切られた時に、起こること。

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