ぶちおの本棚

『傍聞き』同僚が、家族が、隣人が、善人なのか悪人なのか。自分が見たいように、見てしまう。

ぶちおです。

今回は『傍聞き』をご紹介しようと思います。
救急隊、警察、消防隊、更生施設職員が絡んだ人間模様。
悪い方向にマインドが行きすぎた自分が恥ずかしいくらい、心ほっかほか系。
しんみりもありましたが、人間って複雑だから。

短編なのでブレイクタイムにもおすすめ。

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こんな人にオススメ

☆職業がポイントになるお話を読みたい
☆隙間時間に読書したい
☆奇妙な行動の真相を推理したい
☆救われる部分が欲しい

書籍概要

◆作品名 傍聞き
◆著者  長岡弘樹
◆出版社 双葉社

娘の不可解な行動に悩む女性刑事が、我が子の意図に心動かされる「傍聞き」。元受刑者の揺れる気持ちが切ない「迷い箱」。女性の自宅を鎮火中に、消防士のとった行為が意想外な「899」。巧妙な伏線と人間ドラマを見事に融合させた4編。表題作で08年日本推理作家協会賞短編部門受賞!

ぶちおの読書感想文

『傍聞き』
作者は『教場』の長岡弘樹先生ということで、これは期待!
ライトめなお話が4作収録されています。

本を買う前には、あらすじを確認することもあるぶちお。
しかし本を読む前には、あらすじを確認しない派のぶちお。
そう、読む時にはあらすじや事前情報をすっかり忘れていることが多いです。
『教場』の作者さんなら間違いないやろ、とポチり。

読み始めてもダークな展開を勝手に想像しまくりました。
なんでこんな怪しいことを…
あの人の発言、おかしい。何か隠している…
血なまぐさい事件の始まりやで!もしくは人間のきったない部分が露呈されるんやで!!
と思っていたところ、覚醒させられます。

いいえ、人間にはいいところもたくさんありますよ。
人が死ぬだけがミステリではありませんよ。
どこかから天使のボイスが聞こえてくるようでした。

そう!じんわり胸にくるミステリ!
各話の感想をUPしてみます。

「迷走」
仇をともいえる相手を救急車で搬送することになった救急隊員。
目の前で苦しんでいる姿を見て、何を思うのか。
同じく患者を憎いと思っている隊長は、不可解な指示を出すようになる。
病院へ搬送はせず、救急車はサイレンを鳴らしたまま迷走を続ける。

自分のさじ加減で仇を討てるチャンスが来たらどうするか。
救急隊として患者を救うために活動するのが当然、でも業務の中で患者が亡くなってしまうこともままあること。
この日も受け入れ先がスムーズに決まらず、やきもきしている状況。
患者の容態は悪化していくが、打つ手はもうほとんどない。
《何もしない》《何もできない》
未必の故意の証明は難しいもの~
救い難い悪人もいるんだもの~

救急車は病院に向かうのか。

「傍聞き」
連続して起こる事件を追う刑事。
家では娘が絶賛反抗中。
娘の反抗行動は口を聞かず、文句をわざわざ手紙で投函すること。しかもわざとかと思うくらいに悪筆な箇所が。

事件の容疑者にあがったのは、以前刑事が捕まえたことのある人物。
もしかしたら逆恨みで、娘の身も危ないかもしれない。
膠着する事件を動かしたのは…

表題作、傍聞き《かたえぎき》と読みます。
ぶちお初耳ワードでしたが、意味は人の会話を、かたわらにいて聞き耳を立てる、または、偶然聞くこと、漏れ聞くこと。
ふと通りすがりに人の会話を聞いちゃう、あれです。
聞こうとして聞くものも、聞こうと思ってなくても聞いちゃうものも傍聞き。
傍聞きがもっている効果に納得します。

反抗期、あったなぁ~口きかない攻撃w
作中の娘は12歳だったかな。小六。
怒ってるんだぞを表わすには、口をきかないが最強だと思う年頃でしょうか。
そんな娘の反抗に、段々余裕がなくなる刑事の気持ちもわかります。
仕事がうまくいっていない時に、くだらないことしないで!と。

ぶちおもイライラしている時に、肩で愛鳥が連続粗相をした時に無駄に怒りボルテージがあがります。
愛鳥の粗相なんて茶飯事なのに、タイミングによっては怒りを着火させるんだなぁと。

仕事が大変だとわかっているはずなのに、どうして娘は反抗をやめてくれないのか。

「899」
ちょっと気になる隣人さん。
消防隊員は何とか関係を構築できないかと模索しているある日、隣人さんに火事の飛び火が!
ここは格好良いところを見せたい、消防隊員は家に取り残された赤ん坊を助けに行くのですが…

ぶちお、一番お気に入り作品でした。
片思いのブーストがかかった消防隊員、いいですね。
動機は不純ですが、頑張りたい気持ちは応援したいもの。

消防隊には心の傷を負った隊員も。
恋も大事だけど、同僚のメンタルケアもきちんとしてあげたい。
職務の中で、何とか勇気づけることは出来ないか。

消防【隊】なので、仕事には連携が大切です。
冷静に状況を把握して、仲間にも意識を向けて、要救助者を保護して被害を食い止める。
やることたくさんの中でも、片思いの相手の家に入ることでドキドキしちゃう。
これが人間だなぁとwなんか同感してしまう。

よくよく観察していくと、そこここに伏線が。
冷静に考えると気付ける違和感も、やっぱりブーストかかって時だとふわふわしてると見逃しちゃうので注意です。

「迷い箱」
元受刑者の更生を支援している施設の職員。
受け入れ先も見つかりにくい、再犯を繰り返すものもいる。
自分の活動限界を感じることもあるけど、少しでも伝わってくれればと思うけれど。
何でこんなことを続けているんだろう。

迷い箱というのは、捨てるか捨てないか迷った時にその物を一旦保管する箱のことです。
迷い箱の中に入れて、目のつくところに置く。
そうして5日も経つと、迷い箱の中のものが不要だったという風に思えるようになる。
で、迷い箱の中のものを捨てられる。

お掃除術と心理術!
こんなの要らない、使わないとわかっていてもなかなか捨てられない。
そういう時は迷い箱を活用すれば吹っ切れる。

迷い箱と過ごす5日間は、自分を見つめ直す時間かもしれない。
迷い箱に入れるという作業によって、執着を断ち切れるようにする。
要不要は関係なく、迷い箱に入れたことで捨てるための意識をもつということ。

迷い箱も使う人の心次第。
何を捨てたいと思っているのか…
捨てなくてもいいものまで、迷い箱に入れてしまってはいませんか。

4作とも、ただ文章をそのまま捉えると不可思議な行動だったりします。
でも、もちろん理由があっての行動。
その動機を推理していくのが面白かったです。
ブラックな心の持ち主はすぐにバッドエンド想定w
ちゃんとフラットに推理をできればなぁ~

じんわりしたり、切なくなったり。
人間模様はやっぱり複雑。

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まとめ

『傍聞き』
すべての行動に意味がある。
予想も出来ない動機がある。

意図せずして聞いてしまったもの、知ってしまったものの方が印象に残ってしまうこともある。

俯瞰して、平静に、すべてのことを見通すのは難しい!

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